思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

2013-01-01から1年間の記事一覧

『ロジャー・アクロイドはなぜ殺される? 言語と運命の社会学』内田隆三 ☆☆☆★ 岩波書店クリスティーのミステリ『アクロイド殺し』の解題なのだが、西欧の古典の引用と解説が過剰にあるなど、ミステリ解説書というより副題の通りの学術論文、という趣である。…

『皆勤の徒』酉島伝法 ☆☆☆★ 東京創元社星を3つまでは勢いよくつけられるものの、4つめとなると考え込んでしまう。 一見、有機的サイバーパンクというか、小林泰三か田中啓史が書きそうなグロSF。 読んでいれば、背後にあるハードSF設定が少しずつ明かされ…

『アリス殺し』小林泰三 ☆☆☆☆ 東京創元社この地球と『不思議の国のアリス』の世界で起こる連続殺人事件を描く。 設定だけ見れば辻真先『アリスの国の殺人』を思わせるが、片方で死んだキャラは片方の世界でも似たような死に方を迎える、そして誰が誰に対応し…

『星を創る者たち』谷甲州 ☆☆☆☆★ 河出書房新社『コペルニクス隧道』☆☆☆☆ クラークの『月面ーー』を思わせる、液体のような流砂による事故を描いたもの。『極冠コンビナート』☆☆☆☆ 火星の工場用ドームで起きた、謎の二酸化炭素濃度上昇から始まった事故を描く…

『枝雀落語の舞台裏』小佐田定雄 ちくま新書 ☆☆☆『枝雀のらくご案内』が、枝雀師匠自らによる解説と余談だとすると、本書はそれと対になるような、師匠の右腕ともいえるらくご作家・小佐田定雄による解説とマル秘エピソード集と言える。 当時の枝雀師匠を知…

『ファウンデーションへの序曲(下)』アイザック・アシモフ著/岡部宏之訳 ☆☆☆☆★ ハヤカワ文庫SF途中までは、帝国の首都トランター(『スターウォーズ』でいうところのコルサント)の各地を、追っ手から逃れて移動する、という地味な展開が続く。 もちろん…

『日本語千里眼』明石散人 ☆☆★ 講談社文庫再読。 この人の本、確かに余人の知らない知識を元に独自の結論を導き出しているのが凄いのだが、こちらにもある程度政治、経済、歴史的知識が身について来ると、その結論はちょっと…ということもけっこう出てくる。…

『数学ガール ゲーデルの不完全性定理(2)』 ☆原作の方は未読だが、原作者自らが監修したコミカライズ。 問題は、何と言っても、ただでさえ難しい数学の論理的証明に、余計な(?)恋愛話などが絡んで説明不足なことと、デッサン力不足。 そういえばゲーデ…

『ファウンデーションへの序曲(上)』アイザック・アシモフ著/岡部宏之訳 ☆☆☆★あんまり覚えてないが、第一作『ファウンデーション』の前日譚か。心理歴史学の理論こそ考えたが、まだ実用性のかけらも考えたことのない、若きセルダンが皇帝に呼び出され、皇…

『ノックス・マシン』 ☆☆☆★ミステリをテーマにした、SF短編集。なんとも微妙な表現だが、あとがきで作者がSFだと言っているんだから間違いあるまい。 法月綸太郎じゃなければ西澤保彦が書くようなテイスト。『ノックス・マシン』☆☆☆ 「ノックスの十戒」にあ…

『パシフィックリム』 感想覚え書き。 サントラ。 エンディングは歌ものだが、劇伴のメインテーマでもあり、レコード会社のタイアップではないのが◎ほんと言えば、エンドロール前(香港マフィアのボスが出てくる前)までが最高。 菊地凛子はちょっと女々し過…

『トリポッド(3)』ジョン・クリストファー ☆☆☆☆山奥に潜んでいたウィルたち自由市民だが、世界陸上大会に優勝すると、トリポッドたちの都市に連れて行かれる、ということで、潜入捜査をするためにスポーツ特訓をする。 比較的あっさりとスポーツも上達し、…

『怪獣要撃戦』 ☆☆☆★再読。 軍事的知識が増えた(そして怪獣映画が作られなくなった)いまとなっては、当時ほど楽しめないものの、逆に東南海大地震が現実の危機になっている現在では、災害シミュレーションとしての側面にも意義が出てきている。 特に怪獣映…

『MM9 デストラクション』山本弘 ☆☆☆☆そこかしこに特撮のパロディが満載された、三部作シリーズ完結編。 ウルトラマン系はあまりわからないが『モスラ対ゴジラ』『三大怪獣地球最大の決戦』『ゴジラ対メカゴジラ』などなど、東宝特撮映画のほうはだいたい分…

『アナザー』綾辻行人 ☆☆☆☆600ページもの大著だが、文字組みもスカスカ(特に周辺の余白)なら、内容もスカスカ。仕事の日にたった1日で読み終えておつりが来たくらいだ。これなら、カバーも薄くして体裁を圧縮したらページ、体積ともに半分にできたはずだ…

『直観でわかる微分積分』畑村洋太郎 ☆☆☆★再読。 たしかに微分・積分の理論については非常にわかりやすいのだが、それと式の操作についてはかなりの大きな隔たりがあるんだよなあ…。 それでも微分ついてはなんとかついて行けるのだが、積分になると原始関数…

『同人少女JB(3)』一本木蛮 ☆☆☆☆いよいよ受験勉強も切羽詰まった夏休みを間近にし、受験雑誌の座談会に行ったり、追い込まれて動きがなければおかしい、という展開。 雑誌のカットの描き方、父親(『不妊症ブギ』でも顔は描かれてなかったなぁ…)の勉強…

『マンガでわかる 熱力学』原田知広+川本梨恵 ☆☆☆ オーム社マンガパートと、アドベンチャーゲームのセリフ形式というのか、顔つきの脚本スタイルの対話型解説からなる。 マンガでわかるといっても、数式が説明の素材として出てくるので、数式、特に微分・積…

『カード・ウォッチャー』石持浅海 ☆☆☆☆まず、サービス残業が常態の会社研究室に、労働基準監督署がやってくる、というのが共感を誘われる(^_^;) 本当は、上司たちの嘘を、どう監督署員たちが見破るか、という中編が読みたかったが、本作では、監督署員の訪…

『爆撃聖徳太子』町井登志夫 ☆☆☆★ PHP文芸文庫解説で細谷正充氏が絶賛してるけど、そこまでのもんかなあ・・・。 一見狂人的な言動だが、実は深い洞察によるものだった、というのは探偵小説の王道だし。 メルカトル鮎を田中啓史が描くと、こんな感じになる、…

『だまし世を生きる知恵』安斎育郎 ☆☆★ 新日本出版社世の中の迷信・邪教を科学のメスで切る、という内容で、確かにそういう方面に関しては菊地先生と同じスタンスであり、異論はない。ただ、自分でも認めているように専門範囲を広げすぎた弊害なのか、それと…

『新しい太陽のウールス』ジーン・ウルフ ☆☆★ ハヤカワ文庫SFウールスに新しい太陽をもたらすため、宇宙船で旅をするセヴェリアン。これがのっけから、自分の意志で乗ったのか、もしそうだとしたら、なぜ宇宙船の全体像(シルエット)すら知らないのか、など…

『世界のインテリジェンス』小谷賢編著 ☆☆☆★ PHPアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、ソ連/ロシア、イスラエルそして日本のインテリジェンス機関についての組織説明と歴史、著名事件について述べた本。 比重としては組織図や組織史の解説が多いので、庶…

『ビアンカ・オーバースタディ』筒井康隆 ☆☆★確かに、下ネタや繰り返しなどに意識的なものを感じるものの、メタラノベというには完成されてないんじゃないかなあ……。 メタというなら、ベタな設定をだしておいてひっくり返すとか、いちいちツッコミを入れると…

『二流小説家』

『ネット右翼の逆襲』 ☆☆☆★タイトルは出版社が決めたのかもしれないが、どうせなら『逆襲のネット右翼』にして欲しかったなぁ…(^_^;)ネット右翼なるもの虚像(マスコミおよび世間のイメージ)と実像を分析した、ネットを活用した保守言論というか情報戦争を…

『本能寺の変の真相』米田一雄 ☆☆☆まずは何より、小説ってことになってるけど、これ、小説になってないよー。 よく言えば司馬遼太郎の講演か、(会話文があるというレベルで)講談みたいな感じ、悪く言えば小説としての描写が全然なってない。プレーンに言え…

『史上最強の内閣』室積光 ☆☆☆三輪和雄氏推薦の保守的エンターテイメント小説。 45ページに「戦争を放棄した国(略)は、本来尊敬されるべき国家の姿だ。」とあることや、参考文献で『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』加藤陽子著が挙げられているのを先…

『祟り火の一族』小島正樹 ☆☆☆★横溝正史的本格ミステリー。 最初はどんどん読めるが、過去編(モノローグ)に入った途端読みづらくなるのは、一気に登場人物、しかも似た人物が増えるから。 そこからは同じみの怪奇現象的殺人事件が続発する。テイストもトリ…

『アオイホノオ(10)』島本和彦 ☆☆☆☆いよいよ大学の課題の3分映画でアニメを作ったホノオ。自主制作アニメの作り方から、他の作品の紹介など、なかなかの無駄ゴマの消費っぷり。極めつけはホノオが観客の無反応に大ショックを受けるシーン。 ところが、『…