思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『新しい太陽のウールス』ジーン・ウルフ
☆☆★
ハヤカワ文庫SF

ウールスに新しい太陽をもたらすため、宇宙船で旅をするセヴェリアン。これがのっけから、自分の意志で乗ったのか、もしそうだとしたら、なぜ宇宙船の全体像(シルエット)すら知らないのか、など、謎だらけ。なんとなくソーラーセイルっぽいのではあるが…。
前の本編四巻に比べ、特にこの作品では、文章に格調がある感じがして、特に格好いい描写があるわけでも、すごいことが起こっているわけでもないのに、読み飛ばせない。この世界観に馴染んできた、という証拠(成果?)なのだろうか。
SF的に難解なのでもなく、文章的に手ごわい、というのでもない。純文学小説的な仕掛けを読み解くのが難儀なのだ。噂に聞く三島由紀夫豊饒の海』四部作みたいな感じ??
結末も大作の結びらしく情緒的なエピローグ……なんてものはなく、これまた一筋縄では行かないんだな……(^_^;)

解説も良い。
「最終的な正解を手に入れることは、けっして読書の本質ではない。(略)書物に魅惑され、その迷宮でさまようことこそが、読書の本質ではないか。(略)躊躇する必要はまったくない。わたしたちはひたすらこの書物のみを手がかりにして、自分の直感をたよりにしながら、読みのアンテナに引っかかってくる細部を丹念に拾い上げ、少しずつ少しずつ、この迷宮を進んでいけばいい。大切なことは、ここが近道だと教えてくれるような、他人の意見をあまり鵜呑みにしないことだ。本を読む意味は、どこまでも個人的なものである。」
読んでいる時は気づかなかったが、(誤字・脱字・誤変換じゃないなら)「読みのアンテナ」って何だ?