思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

炎舞館の殺人


月原渉
☆☆★
新潮文庫

焼き物に偏執した男の、『魍魎の函』よろしく真四角の館。舞台は明治。
館の中に3つある陶芸窯の中や、館の中で連続殺人がおこる。中にいるのは、『探偵映画』よろしく消えた陶芸の師匠と、身体のどこかしらに欠落を持った弟子たち。『フリークス』みたいなシチュエーションだ。そこへ、異国の五体満足の女がやって来る。

以下ネタバレ

さすがに、断章のふたつめで犯人の名前が出てきたので、間に受けることはしなかったけど、私の予想とは違ったなぁ……。昔ながらの文庫の厚み(200ページないくらい)なので、新本格ミステリーとしてはあっさりだろうなと、あまり期待はしてなかったけど。特に3、4人殺されるなら、新本格なら死者数かける100ページでも普通。
私の予想は、障害のない異国人女と見えた「しずか」は、男性器が切除されていたので、男も殺人、解体できたんだと思ったんだけど(^^;)
いくら窯で焼くにしろ、バラバラにした死体をくっつけて気づかれないのはおかしくないか??

ハケンアニメ』☆☆☆★

面白い要素は多いが、全体的にはブレーキになる(ひっかかる)要素も頻繁に出てきたので、イマイチ乗り切れなかった。
全体の設定も、展開も映画『バクマン。』と大体同じ。「お仕事もの」である。
アニメ業界を俯瞰する、という意味では細かいスタッフのクレジットが出たり、しっかりコンテ撮でアフレコしたりと、妙にリアルなところもある。なんと言ってもその集大成が、2作品あるテレビシリーズのアニメをトップクリエイター達に発注していて、その映像クオリティが非常に高いこと。
俳優陣の演技やシーン単位の演出もよくできている。ラストシーンでも、セリフなしで、横顔や背中で語るところでは、思わず感動してしまった。ただし、その前提となる展開には物言いがあるんだけど(´д`)
一言で言えば、熱血お仕事映画。夢(または原点)という名のやる気があれば、なんでもできる、というお話だ。
当然、山場となるピンチも何度かあるが、原点を確認するだけで自然と周りの人間が協力してくれる。ライト層には評判が良い、というのもうなづける。どうせ『鬼滅の刃』とか『ワンピース』を見に行くような人たちが絶賛しているんじゃないかねぇ。作中の言葉を借りれば「リア充」系のやつらが。
「おまけの夜」でも言ってたが、社会人として組織の中で仕事をしているような人たちには、現実とのギャップがひっかかって、乗れないと思うんだけど。
ネタバレ以前のツッコミ。制作スタジオ以外の現場が異常にだだっ広い。テレビ局の稟議場は『エヴァ』か『トップをねらえ!』のパロディだろうからまだいいとしても、面接会場の広さはどうなん? 東映アニメーションの面接現場はあの通りだよ、と言われたら一言もないけど。
また、全然場違いの職種からの転職組が、わずか7年でテレビシリーズの監督になるって、それこそ天才じゃないとありえないんじゃない? それが一方的に噛ませ犬として扱われるって・・・。主人公の過去の仕事がまったく不明なのも省略ポイントを間違っている。
土曜5時のテレビアニメを、電車に乗る人がリアルタイムでケータイで見たり、そこら中で話題にしているのもありえない(岡田斗司夫はファンタジー映画だと言ってたが、まあそうだわなぁ。設定はともかく、物語的な現実味は低い)。それこそ主人公が「目に入る人が全て、自分の作品の話をしているように幻聴が・・・」という被害妄想の描写だと思ったくらいだ。

以下ネタバレ

本作は、脚本は悪くないのかもしれないが、構成がおかしい。
たとえば、天才監督は、最終話で主人公を殺そうというアイデアを思いつくが、製作委員会(テレビ局主導)が反対するので、板挟みになったプロデューサーが悩む、という展開がある。普通(以上)のクリエイターなら、物語あるいはテーマから演繹して、一番ありそうなのは、描いているうちにキャラクターが一人歩きして、そうなるしかない、だからラストを変更するしかない、となるはず。逆に、テコ入れとして上からサプライズとして変更しろ、となるべきだろう。
演技が下手なアイドル声優にダメ出しを続けていたが、彼女が聖地巡礼して役作りをしていたのをSNSを後から見て知ったから、ダメ出しをやめた、というのもおかしい。どんな努力をしようが、結果がダメならダメ、というのがクリエイターの常識でしょ?
あとこれは他の感想動画でもあったが、主人公たちのアニメが評判を上げた理由も不明。善意に汲み取るなら、終盤にかけて伏線が回収されていくのに視聴者が気づいたから??
SNSのつぶやきがメタ的に画面に流れていたが、それを生かすならば、ラストは読めないくらい小さくて無数のつぶやきが、夜景の夜空を、流星雨のように流れ飛ぶ、というのが良かったなぁ。

アンリミテッド


☆☆☆★

原題は『TRACER』で、邦題は作中のセリフから取っているので、まだましなほう。
パルクール映画で、代表的なのは(観たいけど未だに未見な)『ヤマカシ』だろう。それの印象が強すぎて、本作も舞台はニューヨークっぽいけど、なんかフランスに見えてしょうがなかった。
主人公は、自転車での宅配業(メッセンジャー)で、下宿代も滞納気味の貧乏な若者。それが、とある交通事故をきっかけに、パルクールのグループと関わることになる……。
確かに、ある種のスタント映画というか、手持ちカメラでパフォーマーを追いかける痛快なアクションは何回もあるのだが、いわゆる映画全体のストーリーは、巻き込まれ犯罪もの。
アクションが痛快なんだから、ストーリーも、能天気な娯楽作で良かったんじゃないかなぁ。
物語的には、

透明人間 2020年版


☆☆☆

評判が良かったので期待したが、悪い意味で予想を裏切られた。
映画館で観れば、高評価であっただろうと思うのだが、家で観るには向いてないかも。
画面が暗いし、いくらなんでも、どのシーンも間が長すぎる。これ、映画館で観れば正反対の評価になる要素なんだよね。本作は完全にホラーだから。
主人公は、ちょいぽっちゃりで、個人的には、あまり好感が持てなかったし。単なる好みだけど(^^;)

以下ネタバレ

評判から、低予算映画でもあり、てっきり透明人間はまったく映さずに、主人公の妄想なのかも? と観終わっても決定できない、サスペンス/ミステリーだろうと思ってたのだ。それが、中盤くらいで明らかに非現実的な事が起きる。後半では、透明人間ものではお約束の、液体をかけたりして、作中では実在することが分かる。そこからは、普通のホラー映画だ。ホラー映画の後半はアクション映画になる、というセオリー通りの展開。言ってしまえば『プレデター』と同じだ。主人公が精神病院に入れられる事と、その後の展開は『ターミネーター2』と一緒だし。
今回の透明化理論は、『インビジブル』のような化学薬品ではなく、光学迷彩スーツ。それはSFとして受け入れるとしても、ペンキをかけられたのに、すぐに水で完全に洗い落とせたり、ちょっとご都合主義。全身にカメラがついてるようなスーツで、デザインじたいは面白いけど、科学的には現実的からの飛躍が多い。
後半の、レストランで、座ってた相手の首を切るのは『ヘレディタリー』みたいで、唯一、素直に驚いて楽しかったシーン。ナイフが真横に動くのも、透明な人間が持たせたのではなく、いかにもワイヤーで吊ってます、的なアナログ映画っぽいのも笑える。

ヒッチャー

☆☆☆★

情報ゼロだったが、オーディオ・コメンタリー(ケーブルTV版)でいきなり観たので、楽しく勉強できた。
ストーリーは、『激突!』に近く、『アオラレ』と同じ。なんと言っても、主人公の日常とかは描かず、いきなりヒッチハイクで犯人を乗せるところから始まる。次々と犯人だの警察だのに追われるジェットコースター・ムービーなのだ。
備忘録として書いておくが、邦題は、ヒッチハイクをする人で、普通の日本語なら『ヒッチハイカー』になると思うが、そこは敢えて『ウォッチャー』とかそのへんのテイストを狙ったのか。
たしかに、冒頭に検問を逃れるために犯人がやったように、ゲイ(BL)映画でもある。そうでもないと、殺さずにいたぶるように追い詰める理由がないでしょ。
『激突!』のトレーラーと同じく、物理法則を無視したように、いきなり現れる男に、執拗に終われたり、警官を含めて周囲の人が殺される。これ、ほとんど原因なく祟られる、Jホラーの呪いと同じだよなぁ。
いや、犯人は他の人は次々殺しているから、逆にサイコな犯人にとって、たまたま「運命の人」を見つけてしまったから、本人は殺されずに、周りの人が嫉妬で殺される(挙句には犯人じしんも殺してほしい)、ということになったのか。そう考えれば、主人公と良い仲っぽい、店の女の子が主人公の目の前で無惨にも車に引き裂きの刑になるのも筋は通っている。
これも、コメンタリーで言われて気づいたが、どのカットも構図が決まっているのも、見飽きないポイント。

キル・チーム

☆☆☆

実話を元にした話ということで、『アウトポスト』に近いが、内容は『閉ざされた森』的な雰囲気もある。
最初は、中東の某国に派遣されて米陸軍の部隊の若者の目線で、テロの実情を描く。少しでも実情を知る人ならご存知のように、善良そうな一般市民だけでなく、一見純真な子供や、老人までもが爆弾を抱えて、実際に自爆テロをする。
それに対抗するため、米兵チームは、どこからか入手したロシア製の手榴弾や銃器を使って、怪しいと見た(一方的に決めつけた)人を殺害し、証拠をでっちあげていた。
それに気づいたピュアな主人公は、外部に告発すべきか、そして上官から冤罪殺人を命じられた時に従うべきか、思い悩む。
ライフルは本物に見えるし、スラットアーマー付きのストライカーも割と映るので、ミリオタにも満足行くもの。

映画を早送りで見る人たち

☆☆★

先にYouTubeでの鼎談を読んで、大いに興味を惹かれたが、内容から、「話題に出た以上の内容はないのでは?」という予感も大きく、結果的にその通りだった。
よく言えば洋書(の翻訳)に多い、取材した事例をてんこ盛りにしたスタイル。
色んな人に広義の動画を早送り、あるいは10秒スキップなどで観る理由や状況を聞き、それを紹介している。
結論としては、グループLINEが元凶のようだ。そのために押さえておきたい、話題のネタをチェックする。あとは、不安な展開や、ドキドキしたくない、という「忙しい」現代人の精神事情もあるらしい。
ちなみに、私は「しばらく普通に観て、おもしろくなさそうなら早送りする」派。であり、「ルックや演出で、早送りさせないだけの映画を作らないやつが文句つけんな」派(^^;)でもある。実際に早送りて観る映画は半分くらいかな??