サイレント・ナイト
☆☆☆★
紛らわしい映画シリーズ。「・」のあるなしか、あるいは全く同じタイトルの映画が、少なくとも1つはある。
ジョン・ウー監督のアメリカ映画。彼といえば、二丁拳銃と鳩の演出がトレードマークの香港人だが、本作には、言われなければわからないレベルの拳銃二丁持ちが一瞬出てくるくらい。
クリスマスイブに、マフィアの抗争に巻き込まれて息子が死に、自身も喉を撃たれて喋れなくなった主人公が、マフィアを一年後に皆殺しにする、という誓いを立てる。
喉を撃たれて、死なないどころか、1週間後には退院、ってリアリティ的にどうなの?
喋れないので、スマホのメッセージアプリでとやりとりが数カ所あるくらいで、主人公にはセリフらしいセリフがほぼない。普通なら、紙とペンで筆談したりさせると思うが、一切なし。周りのリアクションだけで主人公の心情を観客に分らせるという、サイレント映画かそれ以上の作劇である。サイレント映画でも、テロップ出すからね。
主人公は、ウルヴァリンの人を細くしたような感じで、むしろ細身で格好いい。主人公親子を撃ったマフィアが、ハゲで全身刺青とはいえ、見た目のインパクトが弱いのが致命的。主人公の妻、ボスの女とか、脇役がもっと華のある人だったらなぁ……。
ストーリーとしては、『ライリー・ノース 復讐の女神』とかに近い。『96時間』とか『ジョン・ウィック』とかは元プロだからね。
本作では、最初は普通のおじさん。ただし、職業は不詳。何故か大怪我したのに、入院中どころか退院後も、誰も見舞いに来ない(^^;)
そして、裸は見せないようにしてるが、筋肉ムキムキなのはまあ、分かるわな(^^;) でも、復讐を誓って地下で懸垂をやろうとしても、一度もできないので、いちおうひ弱な普通の男、という設定らしい。
そこから、銃を入手して射撃場に通う。超オンボロだが、元のスペックは高いスポーツカー(マスタンク?)を中古で安く買って、弾倉入れを付けたり、いろいろカスタマイズ。YouTubeだかビデオだかで、特殊部隊のナイフ格闘術を練習。警察無線を傍受し、マフィアの情報も集める。警察に忍び込んで、マフィアの人物相関図とかも隠し撮りしてきたりと、着々と準備を進める。
どうせ復讐を果たせるのは分かりきってるが(^^;)、どうやって? というのが眼目となる。撮影も、ガンアクションも、マフィアたちの悪さ、ぶち殺すときの血のりの飛び散りも、しっかり描けていて、ソツのない面白さ。
以下ネタバレ
半年くらいした時に、スーパーの駐車場でボスを目撃するのだが、彼は近所の子供に風船だかお菓子だかを配っていたため、人間の盾と、意気をくじかれて断念。でも、昼間の駐車場でナイフを後ろ手に持ってたら、一般市民から危険人物扱いされるのでは?? ただし、そこへきたボスの女が、ジャプ中であることが、肘の注射跡を見せることで観客と主人公に伝える。ただし、これがあんまり効果を上げていないんだよなぁ。
本番の2月ほど前に、情報収集と腕試しと、ボスへの宣言布告を兼ねて、潜入したボスの家にいたチンピラを拉致するのだが、質問用紙(喋れないからだが、こういうところが役人っぽい?)に書かせるために宙吊りの戒めを切ったら、反撃されて悪戦苦闘。太腿をナイフで突き刺されるなど、普通のアクションスター映画なら、クライマックス級の負傷しながらようやく目的を達する。
クリスマスイブの夜に、車を出すのが1時間過ぎ。いくらなんでも早すない? と思ったら、最初は別の抗争現場に行き、女性警官が両陣営の銃撃の間に取り残されて身動き取れないのを見つけ、『ジョン・ウィック4』ばりに車で彼女の周囲をぐるぐる周りながら援護する。
やっと彼女を助手席から車内に入れようととしたところを撃たれて、入れた時には死んでいて、そのまま車外に放り出す、というのはリアリスティックで、良かったけどね。でも、彼女とてこのシーンで初めて登場する、セリフもないキャラなので、ドラマとしてはやっぱり弱い。
また、この場面をチンピラが動画を撮ってボスに送信していたため、ボスから刺客を差し向けるられる。ここで、一大カーチェイスが繰り広げられる。これは、香港映画の全盛期と、マイケル・ベイを足して2で割ったようで、それなりに燃えるのだが、本筋から足踏みしている感は否めない。
ようやく辿り着くと、階段を上りながら、降りてくるチンピラたちを返り討ちに。『アトミック・ブロンド』ほどの爽快感はなく、ここもやっぱり『ジョン・ウィック4』に近い。
そうそう、ここで主人公が決行前に自分が調べた情報をまとめたUSBを送った刑事が合流する。というか彼は誰? というこれまた突然出てきたキャラに戸惑う。振り返ってみれば、序盤に警察に潜入するときに連絡した刑事? のような気もするが、その後は一切出てこないし。こういうえの場合、『ハンナ』みたいに、事件を捜査している警察の筋が並行して走っているもんじゃないの??
ボスが余裕ぶっこいて、壁に金玉だが金のドクロだかが無数にある部屋で、女と踊ってるのは、余裕ぶっこいてる表現なのかもしれないが、いくら腹心の部下を差し向けたといっても、舐めすぎ、というよりシーンが長すぎ(^^;) その前に、女にシャブを打つのも、半年前に主人公が覗き見してる時とかにしておけば良かったのでは?
主人公が階段を最上階まで登ったあたりで、黒人の刑事が合流する。そこで、二人の前に現れたのが、さっきまで踊っていた姉ちゃん。サブマシンガンを薬師丸ひろ子ばりにスローで乱射するショットはそれなりに絵になっているが、いかんせん人物描写が皆無なので、カタルシスもない。2回も弾倉交換するのも、ちょっとくどい。せめて2回目は、主人公が好機と見て、反撃するチャンスにしないと。彼女がやられるのはその後だから。
主人公はここでさらに脚を撃たれて、『ジョジョ』か!? というくらい満身創痍に。
ボスとも、くんずほぐれつの大乱戦で、いちおいうは殺すのだが、いくらなんでも主人公も死なないとへんだろ、というくらいやれていて、大丈夫なの? と思ったら、ラストシーンは、妻が子供の墓と並んで主人公の墓があるのを見つめるショット。うーん、やっぱり『ジョン・ウィック4』だなぁ(^^;)