思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

トランスフォーマー 最後の騎士王

☆☆☆★

3である『ダークサイドムーン』までは映画館に付き合ったが、4である『ロストエイジ』はスルー。富野監督が某所で言及していた(面白いと言っていたわけではなく、ある種の失敗作としてだが)ので、なんとなく興味が出た。
『ダークサイドムーン』では、人類史の裏側にトランスフォーマーがいた、というパラレルワールドものという設定を持ち込んだが、本作ではさらに中世のアーサー王伝説の時代まで遡る。その『ロード・オブ・ザ・リング』に対抗意識丸出しの導入とタイトルから、てっきり全編、中世で展開するのかと思ったら、それは序盤だけで、本編は現代。そこでやってることは1から全く変わっていない。続けて観ると胃もたれするかま、久しぶりに観るなら、メチャクチャ金をかけたCGによる重厚かつ派手な画面は、なかなか満腹感が得られる、こってりステーキ。
無駄に細密なパーツで構成されたロボットデザイン、いちいち変形する際に側転するなど、カロリーメガ盛りである。
ストーリーは、後半に行くほどめちゃくちゃな状況でも、主人公側の人間が死なないことが明白になるので、どうでもよくなる。特にクライマックスの状況は、同じ大味大作『インディペンデンス・デイ リサージェンス』にそっくり。

源平の怨霊

高田崇史
☆☆☆☆★
講談社

450ページにおよぶ、質・量ともに歴史ミステリ作家の作者の精髄ともいえる傑作。
源平合戦、つまりは鎌倉幕府成立にまつわる謎を、現代の殺人事件などという狭雑物ぬきでまとめた、純粋歴史推理だ。純粋歴史推理って、参考文献にも挙げられている『成吉思汗の秘密』とか『忠臣蔵四十七士の○○』くらいと、なかなか少ない。
物語は、『吾妻鏡』などを順に追う形で、源平の騒乱に隠された謎を解いてゆく。歴史の勉強にもなり、もちろん、常識の裏に隠された真実にも瞠目させられる。
しかし、この時代は権謀術数と、戦と暗殺だらけで、

以下、ネタバレ

安徳天皇が女性」というのは、逆に一般には男だと思われてるの? と不思議に思ったくらい。それよりも、壇ノ浦の戦場での女御たちの運命大陸的な陵辱と、同じ、というほうが衝撃。

「時政たちは(略)自分たちの血筋以外の人間は、残らず殺し尽くした。更に源氏と違って平氏の彼らは、自分たちの血筋を非常に重んじた」
いわゆる源平騒乱とは、こういあハウダニットであった、ということ。

斎藤家の核弾頭

篠田節子
☆☆☆☆★
朝日文庫

裏表紙アオリに「スラップ」から、てっきりひょんなことから核弾頭が家にやってきた斎藤さん家のドタバタを『クレヨンしんちゃん』っぽく描くのかと思っていたが、実はハヤカワ文庫J Aからでてもおかしくない、森奈津子が書いてもおかしくないジェンダーSFであった。
特に、序盤の、妊娠と老化の観点からのジェンダー論には、男として何故か反省させられる(^^;) 内容的には、小林泰三田中啓史あたりも書けそうなのだが、このへんは女流作家の真面目と言える。
未来の日本では、中共ばりの社会主義的な管理社会だが、SFとしとはありがちなもの。優れた国民のみに子孫繁栄の権利があり、劣等国民は去勢されてしまう。結婚相手も裁判もコンピュータが決める。
左翼的な人が読めば、日本国家と主人公の夫が右翼で、主人公である妻は左翼と見えるだろうが、実は夫の語る国家論と妻の心情は、だとうな保守とリベラリズムであることが見てとれよう。
少なくとも、後半の国防や核抑止論は、深水黎一郎かと思うくらいまとも。
タイトルにある核弾頭が出てくるのが終盤になってからなので、序盤のうちは、これこそ田中啓史的な大きな赤ちゃんが突如巨大化して手がつけられなくなることを指しているのかと思ったくらい。中盤以降には、彼女が『ハイペリオン』のレイチェルばりに存在感を増してくる。
実に盛りだくさんの本格近未来SFなのだが、もうちょっとテーマを絞っても良かった気は否めない。超成長娘でひとつ、近未来管理社会、保守主義ジェンダー論、3作品以上のアイデアが詰め込まれているのだ。作者もSFはあまり書かせてくれないから、ありったけのアイデアをぶち込んだのかな?

朧夜叉姫1

伊藤勢
☆☆☆☆★

夢枕漠『陰陽師』のマンガ化。たしか前に同じ原作で『賀茂保憲』が出てたかな?
はっきり言って伊藤勢のマンガなら何でも素晴らしいことは確実なので、必携である。大蛇のシーンとか、やっぱり凄い。
スターシステムをとっている作者だな、今回は、ちょっと変化率高めで出演している。特に長年のファンには、ベテラン主役役のおっさんが、二役に分散されているのが興味深いところ。
カバー裏には設定画(?)が、コメント付きで載っているので見逃さないように!

search/サーチ

☆☆☆★

パソコン画面だけで2時間の映画を作った、といあことで、興味津々。
設定だけ聞いた時は、文字だけの映像だろうから、間がもたないだろうし、てっきり10分くらいの短編だと思っていた。
もちろん、文字もあるが、ビデオ通話と、テレビニュースをパソコン画面で観る、という(反則)技を駆使することで、主人公の一人称だけではない視点を入れているのがうまい。全体の構成としても、失踪した娘の乗っていた車が池から発見される中盤以降にはニュースや監視カメラなどが多用され、自然と世界が広がる、2幕構成になっているなど、周到に計算されている。
演出として、誰もが「その手があったか?!」と唸らされるのが、何回も出てくる、ライン的なメッセージを送る、送信前に、打ち込んだ内容を消去するシーン。映画では普通表現しづらい、主人公の迷いを、小説以上にうまく表している。
ミステリーとしても、冒頭の妻の病死から娘の失踪とその理由、犯人探しに至るまで頃合いを見てツイストが入るので、最初から最後まで飽きさせない。

『ハンターキラー 潜航せよ』
☆☆☆☆

潜水艦映画。あちこちで評判が良かったので、放送を期待はしていた。
U-571』みたいな映画だと予想していたのだが、意外にも『レッド・オクトーバーを追え!』だった。
本作はもちろん同作と『ネイビーシールズ』を合わせて、『バトルシップ』風味の味付けをしたもの。
演出でのリアリティはありつつも、ストーリーは娯楽の王道を突っ走った面白さ保証つきの超B級映画だ。

ストーリーは、最初は紛争海域に派遣された米原潜が、ロシア潜水艦のクルーを救助してみたら、米ロ激突の最前線に巻き込まれてしまう、というもの。クーデターものであることは、中盤あたりに明らかになる。
現実的かどうかはB級娯楽映画だから置いておくと、実に論理的に無理・無駄のない十分に及第点をクリアした脚本であると言える。特に、最初は潜水艦乗りだけの話だと思っていた、特殊部隊のエピソードがストーリーの片輪にしっかりグリップしてくるあたりには唸らされた。これは、最初は離れていると思わせておいて、文字通りラストにはぴったり主人公の乗る潜水艦にくっつくのだ。
もちろん、ロシアの国防相がクーデターを起こすのはなくはないとしても、ロシアの大統領がメチャデカくてムキムキだとか、『インディペンデンス・デイ』か『ホワイトハウス・ダウン』か? という豪快すぎる展開も、逆に潔い(^_^;)

リアリティという面では、細部の描写。特殊部隊の方は、『ネイビーシールズ』に引けを取らない、本作だけ見れば十分に「スゲーリアル」と思わせてくれる。トランクを別に落とした上で、バカでかい荷物を背負って敵地に降下するところ、スマートフォン的なもの(そのもの?)をスコープ代わりにする、射撃音や被弾痕も納得(いや、銃器マニアからみたら分からないけど、私のような低レベルミリオタからすれば)の仕上がり。
潜水艦でも、『沈黙の艦隊』を完全実写化したような、最初に『ガンダム0083』を観たような興奮がある。特に、潜航時に物につかまっていない人が斜めに立っているように見えるカットは素晴らしいセンス・オブ・ワンダー! ロケット弾を至近距離で喰らったらどうなるか、その衝撃の凄さとか。それや魚雷の爆発でも、一瞬爆圧で真空状態になるので直後には吹き戻しがあることなども描写(軍事・科学マニアなら分かる、絶妙な塩梅で)されていて、これまたビンビン来た。爆発の衝撃で落下した魚雷、駆逐艦からの発射時の魚雷など、CGも含めた物の重さの演出も巧い。
そう、本作はテレビ画面でもCGであることが分かるのに、レイアウトの格好良さと演出で、チープさ(物理的な軽さ、存在感の両方とも)を感じさせない。
レイアウトでは、先の特殊部隊の空挺シーンでは雷雲の中に突っ込むなど、アートボードが美しく、それをきっちり本編に取り込んでいる。クライマックスのミサイル発射シーンの色彩も美しい。