思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『史上最強の内閣』室積光
☆☆☆

三輪和雄氏推薦の保守的エンターテイメント小説。
45ページに「戦争を放棄した国(略)は、本来尊敬されるべき国家の姿だ。」とあることや、参考文献で『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』加藤陽子著が挙げられているのを先に見たので、読むのやめようかとも思ったが、後者はある種のブラックユーモアかと思わせなくもなないくらい、本編はまとも(グローバルスタンダード)な内容である。
状況設定や雰囲気的には『コレキヨの恋文』に近い。
常にスタンバイしている一軍の内閣が憲法も法律も無視して政権の座につく、という設定からしてお笑いコントレベルの設定。ま、設定はめちゃくちゃでも、やることがまともならいいわけだが、そこまででもない。
ただ、基本的に作者が劇作家だからなのか、トーンが軽く、おちゃらけ気味で、しかしながら痛快にイケイケドンドンでもないのが肩透かしなのだ。(2つ挙げるなら、ジョンウンの言動と対特亜会談)
どうせなら『宣戦布告』のようなハード路線か、『鳥玄坊』のようなハチャメチャ路線にして欲しかった。
読後感としては(原作は未読だが)『プリンセス・トヨトミ』のようながっかり感が・・・。(蛇足だが、『プリンセス・トヨトミ』には大阪が主役なのにお笑い要素が皆無だったのが最大の欠点だろう)
クールに考えるなら、政治を風刺した小劇場の舞台を見るように読むのが最適な心理状態なのかもしれない。

史上最強の内閣史上最強の内閣
室積 光

小学館 2010-11-25