思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『アナザー』綾辻行人
☆☆☆☆

600ページもの大著だが、文字組みもスカスカ(特に周辺の余白)なら、内容もスカスカ。仕事の日にたった1日で読み終えておつりが来たくらいだ。これなら、カバーも薄くして体裁を圧縮したらページ、体積ともに半分にできたはずだ。(内容的に、その体積と重量に意味があるわけでもないし)
内容は、新人のゲーム小説さながらのファンタジー・ホラー・ミステリ。『リング』みたいなルールのあるホラーで、綾辻ならではの意外な犯人(?)が読みどころ。
ただ、読み終えてみればスピーディーなリーダビリティーと意外な犯人像だけで満足してしまうが、ツッコミどころもいくつか。
最大のものは、一人称記述のくせに「あることに気づいた」とか「彼は」などと(敢えて言えば大文字の作者=綾辻が)読書を意識して書いてあることだ。これは綾辻自身が自戒している「三人称記述で嘘を書かない」に匹敵するアンフェアな記述と言えないだろうか。誰かに語っている形式あるいは回想録ならともかく。
個人的好みで言えば、ラストに〇〇〇が〇〇を〇〇〇時、〇が〇〇〇して〇〇して欲しかったなぁ…。その方がホラーとして美しく終わっていたと思うのだが…。