思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

美しき諍い女

☆☆☆☆

公開当時だか、ビデオ発売当時だかに、雑誌広告を見た覚えがある。当時買っていた雑誌だから、まさか「ジャンプ」じゃないだろうし、「アニメージュ」「ニュータイプ」??
てっきり『愛人 ラ・マン』みたいな不倫映画だと思っていたのだが、ちゃんとした(?)芸術映画だった。
芸術映画といっても文芸映画ではなく、絵画映画というか、画家映画というか。『燃ゆる女の肖像』みたいな感じというか。
ちなみに、タイトルは、ヨーロッパの古典小説だか絵画だかにあったモチーフのことらしい。めちゃ乱暴に言えば『モナ・リザ』みたいな感じか。
若手の画家の恋人が、半ば引退した大御所の豪邸に遊びに行き、そこでヌードモデルを務める。デッサンを描いているうちに大御所も創作意欲が湧いてきて、さまざまなキツいポーズを取らせ始める……。と、あらすじだけ書くと、まんま『完全なる飼育』みたいなピンク映画の感じなのだが、描かれているのは純粋な芸術的衝動である、というのが最大の違いだ。もちろん、どう受け取るかは観客しだいだが……。
実際に俳優が筆をはしらせる全身カットもあるが、キャンバスに筆を持つ手が絵を描きあげてゆく1カットもたくさんある。
これといって盛り上がる激しいシーンはないし、1カットも長いこと多いが、目が離せない。このあたりは、映画全体の尺が長い(この完全版は4時間!)ことと合わせて、濱口竜介っぽいところも多々感じた。
プロットがどうなるか知りたかっただけなので最初の1時間こそ普通に観たが、後の3時間(!)は早送りしてしまった(^^;) けど、劇場で観ても全く退屈せずに観られたと思うでき。スクリーンサイズも3:4で、最高画質版とのことだが、VHSかLDなみだったのにも関わらず、だ。
まあ、このへんはほんのちょっと絵画をかじったことがある、という個人的経験も加点要因として影響しているかもしれないけど。