思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

劇場版SHIROBAKO

☆☆☆☆

テレビシリーズは放送当時、全話楽しく観ていた。
始まりはテレビの1話を踏襲していたりするが、この映画版の状況の理解にちょっと時間がかかった。テレビシリーズの3年後なのだが、ステップアップしたのではなく鳴かず飛ばずで落ちぶれている、という設定だ。つまり本作は「負け犬たちのワンスアゲインもの」ということ。満を持しての劇場版なのに、燃え度/心情(俗に言う「テンション」)はいきなり出鼻をくじかれる感じ。
別の見方をすれば、テレビシリーズの最初は、ヒット作のなかったアニメ会社だったわけで、同じ事を改めてやるタイプの映画版、ということも言える。『カメラを止めるな! ハリウッド大作戦』とか『トップガン マーヴェリック』とかもそうかも。
構造として同じ話なので、文字通り良くも悪くも、面白いところはテレビシリーズと同じ。散らばっていたスタッフを集めるとか、敵地に乗り込んで直談判するところもまんま同じだ。もちろん、映画ならではスケールアップもある。テレビシリーズではテレビシリーズを作る話だったが、本作は劇場映画を作る話になっている。が、それに比例した作画の緻密さどころか、日常場面のキャラ作画じたいもイマイチなのが残念。本作で描かれる内容同じくスケジュールがあり得ないくらい短期間だったりしたのか? と本作をテキストに邪推(妥当な推測?)せずにおれないのは諸刃の剣?(^^;) 本作の完成度が高ければ何の問題もなかったのだろうけど。
どうしてもこの前に観た『ハケンアニメ!』と比べてしまうのは同じ設定の作品だけに致し方だろう。両者には、それぞれにあるものとないものがある。『ハケンアニメ!』には情熱はあるがそよ中身がない。本作には映画(アニメ)制作の具体(リアリティ)はあるが、情熱に乏しい。
顕著なのがクライマックス。この手の作品では定番というよりも山場を作るにはこれしかない、というのが「締め切り間近でのリテイク」だ。本作では、主人公の説得はあるが、皆の後ろ向きの心をひっくり返すほどの大演説ではない。逆に、皆の中にもリテイクしたがっていたのを明文化した、という感じなのだ。おまけに、肝心の地獄のリテイクのシークエンスはばっさり完全カット。これでは、作中で「クライマックスが物足りない」と語られているリテイク理由そのものじゃないのよ(´Д`) 終わりよければ全てよし、と言われるが、本作の後味がもうひとつ晴れやかではないのは、これが原因だろう。
そのリテイク前と後のシーンが実際のアニメとして流れるのがクライマックスとしてかろうじて成立させている。それとて、『ハケンアニメ!』の作中アニメに及んでいないんだけどなぁ……。まあ、ビフォー/アフターの差で、頑張ったのは分かるのだが。
作中作が終わるとエンドロールで、エンドクレジットの背景で、膨大な登場キャラの「その後」が描かれる、『ガールズ&パンツァー 劇場版』式のラストはやはり問答無用でグッと来る構成ではあるが。