思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

集団左遷

☆☆☆★

ビジネスマン小説といえばの江波戸氏の原作による、熱血サリーマン映画。主人公はあぶない刑事柴田、ダブル主演は「敦夫さんに聞いとくれ」。80年代らしい紹介にしてみたけど。
ジャンルとしては典型的な「負け犬たちのワンスアゲインもの」。
大手不動産会社「太陽不動産」は、バブル崩壊の兆しによる不動産不況で、百人のリストラの必要に迫られた。そこで、首都圏で15億の売り上げを上げなければクビという部署を新設し、そこにさまざまな問題社員すなわちリストラ要員を異動させた。
そこで敦夫さんの熱意の元、次第にがんばる部員たちの情報をスパイから得て、次々に副社長からの妨害工作が。
サラリーマンとしては、感情移入して観ると、ムカついて観るのを辞めたくなるので、引いた目で観るのをオススメしたい。あるいは、社長の立場に立ってみるとか。でも、本作の副社長は、とても感情移入できないように描いているんだよなぁ(^^;)
もちろん、最後までやられっぱなしでは終わらないので、頑張って見よう。
劇伴は、邦画らしい、ちょっと間の抜けたような感じ。どん底となる悲惨なシーンですら、メインテーマとは言え、やっぱり緊張感のない曲。令和の視点から見ると、伊丹十三映画っぽい曲調。

以下ネタバレ

観客の関心は、どうやって無謀な売り上げをダメ社員が達成するのか、と言うことに加え、スパイが誰か、ということ。
前者は、実話ベースでもないので、なんとでもなる。フィクションならなんとでもなるところを、『しょせん作り事』と白けさせない絶妙の地味な(つまりどこかの映画やドラマで見たことのある)営業活動の積み重ねになっている。
クライマックスと言える分譲住宅の火事で、あたかも住宅地全てが燃えてなくなったかのようなミスリードはいかがなものかと思ったけど。あと、結局土下座で売れるんかい!? とかね。その相手が(当時は、テレビによく出てたなぁ)城南電気をモデルにした社長で、それを伊東四郎が演じていたのも伊丹十三映画っぽい。
ラストは、主人公たちは宣伝費ゼロながら半分の売り上げを上げるも、別の会社を起こすあたりは、リアリティのある結末。
悪役である副社長も、単なる自分の権力や金だけの利己的な人物ではなく、あえて狂気を演じている、と言わせる当たりが、単純な二元論になっていない、うまいところ。ただし、昼間から一人で(接待とかならまだしも)乗馬をやってたり、料亭で飲食したりと、言動から見て同情の余地はないんだけど……。これが質素な生活をしている、とかならガラリと違う話になっていたと思うけれど。