思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

スーツケース・マーダー


☆☆

ライフタイム製作の映画は、女性が主人公であることと、妙に色彩が明るくて彩度が高い画面である。
スーツケースに詰められて発見された死体から始まるので、ミステリーまたはサイコ・サスペンスかと思いきや、ある女性のドラマ。
主人公というか、主役の女優は、露骨に整形美女というか、作り物っぽい顔で、これが狙っているのか、ターゲットたる観客受けを狙ったのかが、日本のおっさんたる私にはよく分からない(@_@)
本作は、ジャガモンド斉藤的に言うなら、「言わんこっちゃない映画」である。後半3割くらいが裁判ものになるのには驚いた。でもまあ、あんまり法廷ものとしては面白くないんだけど。ミステリーとして面白くするなら、法廷シーンから始めるべきところだが、製作スタジオというか、ターゲット的に、それに至る女性の感情を描かないとないいけないから、こうなるのはしょうがないのかもしれない。
ネタバレなしで、最後まで観た感想を言えば、「知らんがな」というか、「ミステリーではなく再現ドラマやん」という感じ。勝手にミステリーだと思って観た私が悪いのだが。

以下ネタバレ

本作は、浮気性だという周囲からの警告を無視して結婚したおっとに浮気され、自分も浮気した挙句、夫を殺したという、自業自得というか、まさに「だから言わんこっちゃない」という、よくある知情のもつれ殺人事件に過ぎない。まあ、実話を元にした話だから、そんなもんかもしれないけど。
だからこそというか、いちおう、実際に彼女が犯人なのかどうかは、どちらともとれる結末にはしている。限りなく黒に近いグレー。判決としては、百一歳までの懲役が出ているそうだが(アメリカはいいねえ。日本なら、夫殺しだけならら懲役20年もいかないかも知れない)、映画としては断定していない。
この、裁判や弁護士への嘘の発言としか思えない描写と、先述した、顔が整形っぽいのが、妙にリンクするので、これと演出上の仕掛けかと思ったのだ。
夫の浮気だけならともかく、自分も職場の医者と浮気し返してるんだから、同情の余地もないしねぇ。特に特異な経緯でもないし、映画化する意図がどこにあったのか? と言いたくなる。
まあ、ミステリー的に、冒頭のスーツケース発見では、中身をしっかり見せないので、彼女が殺されたと思わせて、実は夫だった、というツイストはあるのだが、まあミステリーに慣れたひとなら、充分予想できるし。そもそも浮気性の夫が殺されても、同情する(衝撃を受ける)こともないから、効果を上げていない。