思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

アイアン・スカイ


☆☆☆★

なんとなく高校生の時に雑誌広告が載っていた気がしていた、つまり90年代の作品だと思い込んでいたのだがらなんと2012年作品だった。
アメリカが、大統領選挙の2期めの人気取りのために、月の裏側に黒人を着陸させてみたら、そこにはナチスの残党が秘密基地どころか、亡命国家を作って、地球侵略の機会をうかがっていた……。
という、バカみたいな設定で、その通り、その後の展開も、よく言っても『ミカドロイド』みたいな90年前後の日本の特撮映画やビデオ、悪く言えばアメリカのZ級映画みたいなツッコミどころだらけ。そもそも、ヒトラーこそいないものの、第二次大戦当時の技術力じゃ、月の裏側どころか、地球の衛星軌道までも行けないしね。
黒人がもっていたスマホを見て、地球にナチスの男女がそれを入手しにUFOでやってくる。
彼らの技術ギャップやカルチャーギャップは相当あるはずだが、そこはネオナチ連中に逆に絡まれるくらいで、『帰ってきたヒトラー』ほど徹底していないのが、(私に)Z級あつかいされる所以だ。ただし、ネタバレ欄で書くが、クライマックスの展開は普通以上に面白いのだ。

以下ネタバレ

ところが、なんだかんだで、彼らを使えば、「敵を作る」ことで支持率を上げて選挙に勝とうという大統領の思惑と一致し、地球に宇宙船で攻撃をしかけようとしたナチたちを、宇宙ステーションが変形した宇宙戦艦で返り討ちにする。
この明らかにドイツの飛行船ヒンデンブルク号をモチーフにした宇宙船がメチャ格好良いのだ。SF(メカ)ファンは、これだけでも見る価値がある。衛星爆弾をワイヤーで牽引していたり、細部のデザインもメカフェチには堪えられない。謎だったナチスの最終兵器「神々の黄昏号」は、超巨大アプサラスみたいで、これまた巨体感を表す細部の作り込みが見どころ。デザインはそこまででもないけど。
クライマックスになって、スチームパンクから、未来宇宙SFにシフトして、やたらと燃える(展開というより)描写が満載なのだ。
オチとして、月のヘリウム3を争奪するために、全世界が全面核戦争に突入するのを、衛星軌道上から映しながらエンドロール、というブラックさも良い。なんか『キングスマン』を連想したけど。