思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

あのこと

☆☆

私小説的な原作をベースにした映画で、ベネチアだかベルリンだかで最優秀賞になった作品。
ひとことで言えば、女子大生が堕胎するまでの話。舞台は60年代のフランスで、当時は中絶が違法だった。
本作のレビュー動画をいくつか見たが、どれも本作がテーマとしている中絶問題に関しての感想や議論ばかりで、画面サイズがテレビサイズであること以外に、劇映画としての作劇や演出に触れているものが殆どないのは、片手落ちでは? 
私はあまりに地味なので、途中から早送りして、プロットを追っていたので、余計に。
まず、大きいのが、上述の画面サイズで、カメラが基本的に終始主人公の真横から撮っていて、あたかも彼女たち仲良し三人組の一員になったかのような親近感というか、我が事(最近流行りの「自分ごと」というのは誤用やからね)として感じられるような演出・撮影になっている。
また、(ネタバレかもしれないが、誰もが想像つくでしょ?)中絶シーンでは、主人公が闇医者の家に入ったところから、施術が終わるまでをワンカットで見せる緊迫感とダイナミズムがポイント。
感想動画とかでは、子宮にかぎ棒を入れるのが痛そうとあったが、劇場公開版では、ボカシはなかったのかな??
物語的には、この手の普通の映画なら、男女が付き合うシークエンスから始まって、セックスシーンまであってからの、「できちゃった」後にさあどうする? となるのに、遠距離恋愛ということもあって、主人公の妊娠後の体調の変化から映画が始まる、というのも特徴。
超個人的には、宗教や法律以前に、中絶云々より、結婚を前提にしない性交こそが問題なんじゃないのかなぁ。なので、あんまり共感はできなかった。これがレイプの結果なら別だけど。