思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

憎いもの


☆☆☆

伊福部御大の音楽は、日常系につけるには不穏過ぎるし、楽しい場面の曲が書けない人なので、田舎者の東京風俗見聞録的な本作には合わない……と思っていたら、終盤に至ってしっくり来た。
まあ、タイトルからして結末をネタバレさせてるんだけど。『自転車泥棒』的な鬱展開になるのは、同作を知ってれば分かるだろうし、おそらく製作者も、脚本の段階から、それを意図しているのだろう。
タイトルさえ変えれば、現代でもちょいとしたブラックなミステリー短編として通用する佳作。
別に予想もしない展開、というほどでもなく。

以下ネタバレ

タイトルからして、主人公のおじさんが、何かに裏切られることは予想されるオチ。てっきり有金または仕入れた品物を失うんだろうと思っていたら、親孝行で品行方正な娘が、売春してたとは。まあ、これは同行していた市議に、いわゆるソーブランドに連れていかれたあたりで読める。当人の部屋に入ってくるのかと思ったら、市議のほう、しかも事が終わったあと、というのが、まさに詰将棋的追い詰められかたで、後に彼を殺す展開に十分な説得力を持たせている。
ただ、殺害の動機や、娘の東京での、身体を売るに至る経緯を、警察の取り調べで喋らせる、というのはちょっとヘタクソ過ぎないか?
そもそも主人公の娘が、まあ普通の会社のOLなのに、食うにも困るなんてことがある??