思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

すずめの戸締まり

☆☆☆★

良かった点は、『天気の子』とかでは、クライマックスでミュージックビデオか!? というくらい全面に出していたのに、本作ではエンディングに収めていたこと。
あとは、椅子の動きが、アニメーション的な快楽を実現していたこと。でもこれ、関節がないから、リアルに考えたら、あのようには動けないけどね。『インターステラー』のターズみたいな、ガチャガチャしたものにしからならないはず。明らかに、子犬を参考にしたアニメートだよねぇ。
背景美術の美しさについては、新開誠クオリティなので、今から言うまでもない。
神戸人としては、神戸弁はわりとちゃんと喋っていたのがマル。アクションの舞台となった遊園地は架空だけどね。須磨ロープウェイの上に簡単な遊園地はあったような気はするけど。

すずめが草太に恋愛感情を抱く過程がないのが問題。初期の新開誠作品には、厨二病的な片思いとか、若い恋愛感の共感要素があったが、一般的に解放された作りゆえに、椅子になった草太に命懸けで助けに向かう必然性が感じられなかった。子供用椅子の姿になった草太に感じるのは、ペット的な愛玩性でしょ?
草太が少女マンガ的な美男子だから一目惚れした、という説も聞いたけど、そうは見えないけどなぁ。なんか長髪でキモい変人としか。セリフもベタだし。
主人公のほうも、セリフは良いが、顔に特徴がなくて、よほどのファンじゃないと、イラスト描いて、と言われても描けないんじゃないかなぁ。
何より、アクション多目なのと、ロードムービーのように、九州から日本を東に向かってゆくのを除けば、映画の骨格は『天気の子』とまったく一緒やん(´Д`)
東日本大震災を物語の主軸に据えたことも、あんまりうまく料理できているようには思えなかった。

以下ネタバレ

地震が起きないように封印を刺している陰陽師みたいな仕事だが、東日本大震災は起きている。草太または当時の「閉じ師」(病院で寝たきりのじいさん?)がボンクラだったのか、封印しきれなかったのか。彼らがいる世界だから、せめて阪神大震災東日本大震災は起きなかった、というパラレルな世界線にすれば良かったものを、東日本大震災に主人公が被災して、それをきっかけに、主人公は才能に目覚めていた。
それがあの世にいる母だと思って、主人公は実家を目指すのだが、たどり着いた先にあったのは、当時見たのは、未来の自分だった、というのは単にどんでん返ししたいがためのオチにしか見えない。言ってることも綺麗事で薄っぺらいし。むしろ、扉をくぐったら子供の自分に戻って、母親から「私がいなくても大丈夫」という肯定感を与えるほうが良かったのでは?
あと、おばさんの本音が出るところは良かった。すぐに悪霊に憑依されたから、と明かされるのは「なんやそれ」とがっかりさせられた。
細かいツッコミはめんどくさいので省略(^^;)
妖怪ネコのダイジンが子供っぽいのは、先代の閉じ師が子供だったら、という解説動画にはなるほどと思わされた。観ている間には、ネコが主人公を好きにさせようとしているのは、主人公の母親が転生または呪いで変化させられたからだと思っていたので。