思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

楽園の真下

荻原浩
☆☆☆★
文春文庫

ジャガモンド斉藤推薦の「和製モンスターパニック」もの。
そのモンスターとは、カマキリ。カマキリと言えば、カマキラスが有名だが、怪獣ではなくモンスター扱いなので、サイズに人間と戦えるサイズ(具体的なサイズはネタバレなので、詳しくは後述)になっている。
ストーリーは、まあ言ってしまえば、オーソドックスなアメリカのモンスター・パニック映画のそれ。
効果音を一音ごとに改行するあたりは、和製ホラー小説の作法。
最初は、15センチくらいのギネス級のカマキリのうわさから始まり、主人公が取材に訪れた島には、自殺率が高いという不穏なデータがある。
普通に面白い娯楽小説といえる。映画にしたら、さぞ手堅く面白いだろう。

以下ネタバレ

自殺とカマキリの関係は、自殺の原因が水死だと分かれば、ある程度生物に興味がある人なら、ほとんど想像が付くだろう。ハリガネムシである。
それが明かされるのも、半分くらい(本作はトータル500ページもあるのだ)で、本来ならこの後すぐにオチにして、300ページでまとめても良かったくらい。
そとあとは、徐々にデカいサイズとカマキリと追いつ追われつのバトルとなるのは、エメリッヒ版『ゴジラ』のようだ。
最後に1メートルの大物が出てくるのは、『エイリアン2』を思わせるが、ずっと前から伏線を張っているあたりが上手い。
ただし、カマキラスとかエイリアンを見ていると、1メートルのカマキリと言われても、あまり怖そうに思えない(^^;)その生態や、狩りのスタイルは、十分に脅威であると、描写は充分なのに。不思議だ。このあたりは映画で、しかもエイリアン的にちゃんと演出すれば、より怖く感じると思うのに。
1メートルのゴキブリなら、十二分に恐ろしいのになぁ(^^;)

さらにネタバレ

ラスト、エピローグ的に主人公が島から東京に戻るシーン。主人公がハリガネムシに寄生されていたかと思わせる描写がある。実は吐いたらスッキリしました、ということにされて(なんだ猫か)、カマキリ以外の巨大昆虫が船に潜んでいた、というオチになっている。これもモンスターパニック映画あるあるで悪くないのだが、どうせなら主人公が海に飛び込むか、ハリガネムシに腹を食い破られるシーンで終わったら、読後感は☆は追加されただろうになぁ……。続編の期待を(作者的にも読者的にも)もたせる効果は、どちらでも変わらないと思うのだが。続編でも主人公を務めさせたいほど魅力的な主人公とは思えなかったけどなぁ(^^;) 続編の主人公は島の女研究者・秋村で十分でしょ。『リング』の続編『らせん』でもそんな人物配置だったでしょう?