思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

大河への道

立川志の輔
☆☆☆★
河出文庫

映画の原作だが、本書も落語を小説化した(協力とある森下佳子氏によるものか)もので、落語の文字起こしを読みたかった私にはがっかり(´Д`)
内容はだいたいは同じ。違うのは、主任が脚本家に三顧の礼を取るのながないことと、クライマックス(ここは下のネタバレ欄で)。
設定の違いで大きいのは、年齢。まず大きいのが脚本家が30代の若手であること。これ、映画化における致命的な改悪。これも詳しくは後述。
もうひとつは、伊能忠敬の四番目の妻のエイ。映画では北川景子が演じていたので、伊能忠敬加藤茶かよ?! と思ったのだが、本作ではちゃんと40代と、まだ許せる範囲内(であり、たぶん史実通りでは?)。
また、伊能忠敬の人間像にも迫っていて、しかもそれがラスト(オチ)への伏線になっている。これまた映画の欠点は克服されている、というかそもそも存在しなかったのだ。

以下ネタバレ

オチとして、脚本家が完成しないことも、『大河ドラマ 高橋景保』になるところも同じだが、そうなる必然性は映画と全然違って、納得ゆくもの。
どれだけ調べても、伊能忠敬の人間像が掴めないから、台詞ひとつも書けない。それは脚本家が若いから、隠居してから大活躍した彼のことが想像できない、ということにも通じる。まだ高橋景保なら分かるからそうなった、という展開だ。
西村雅彦との天丼ギャグとか入れる尺があるなら、ちゃんとこちらを拾えよ、と言いたい。これも原作レイプ
それとも、落語はどちらとも違って、映画を観て、その欠点を納得いくかたちで改良したのかも……?