思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

大殺陣』☆☆☆☆★

東映チャンネルで公開されていたもの。これまた事前情報ゼロだったが、メチャ面白かった。ウィキによれば「1963年の『十三人の刺客』と同じ脚本家・池上金男工藤栄一監督によるもの」ということらしい。
なるほどそうなのだが、私的にはより『十一人の侍』に近い感じだった。ただし、『忠臣蔵』テイストはだいぶ弱まり、テロ映画みたいな感じになっている。
最大の違いは、『十三人の刺客』などで強烈だった、悪逆無道な殿様、という主張がかなり弱まったこと。なにしろ、暗殺対象は、自分たち謀反組織のメンバーを直接拷問した人物ではなく、次の老中になる、という後半になって登場する人物なのだ。実際に襲撃の段になると、展開は『十一人の侍』とほとんど一緒。吉原という江戸の中(吉原田んぼと言われるだけあって、周囲は田んぼとかもあって、それがいっそう『十一人の侍』っぽい)という違いはあるが。また、その立地上、田んぼの中や、堀の中、という水が印象的な殺陣になっている。
ヒロインは、たいていの場面で鞍馬天狗みたいな頭巾をかぶっているが、あんまり可愛くないのに、可愛いことになっているのがちょっとしんどい、というのが唯一の欠点かな(^_^;)
最終的な襲撃メンバーが8人かつ、直前にヒロインがメンバーの一人に強姦されそうになって短刀で抵抗しようとしたら、揉み合っている内に死んで7人になるなど、なんとか全員を把握できる数なのもポイント高し。
それを除くと、撮影が最高! 画面は白黒のコントラストと人物の輪郭など、照明に加えて、構図が全カット完璧に決まっている。静的なシーンでは小津安二郎ばりに、地面にカメラを置いたかのような低いアングルからのショットで、人物の配置も、手前・中・奥のバランスや、背中を効果的に使ったショット、画面を区切る建築物の配置、かと思えばアクションシーンでも長回しや、ヤクザもののような手持ちカメラの躍動感を活かしたりしている。
劇伴も、能のような静的なシーンあり、読経を前面に出しつつ強姦したりと、実に凝っている。
黒澤映画とはまたちょっと違った現代的な視点でも十二分に鑑賞に耐える、ある種、時代劇の頂点なんじゃないの?!

1964年 日本