思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

偶然と想像


☆☆☆★

世間的な評価は激賞なんだけど、私的にはどうもノレないんだよなぁ。でも、ダメダメだとも言えない。他のレビューでも、脚本が凄いとは言われるが、それ以外に何がどう凄いのか、誰も教えてくれないのだ(´Д`)
まず、セリフが棒読みで、華のない俳優が固定カメラの長回しなので、見るに堪えない……ところが、そうじゃないのが濱口作品のポイント。
一見すると日常的な「あるある話」なのだが、そこに伏線として、後の展開(会話)につながる要素が仕掛けられている。また、逆にカットが変わる時は「ここ重要ですよ」というサインなので、ある意味では極めてわかりやすい。それも、正面からカメラ目線(対話の相手を正面から見据えている、という場面)なので、間違えようがない。
また、無造作に撮っているようで、画面に対する人物の収め方がちゃんと計算されている。
そして、なんと言っても照明および色調のバランス。ハリウッド映画的なセピアやブルー系に統一するのでもなく、コントラスト強めでもなく、テレビや時代劇的な影のないくらい全方向から照明を当てるでもない、真夏の快晴の日に薄雲が太陽を隠している、というくらい絶妙な明るさなのだ(室内においても、夜でも)。
難点は、セリフの棒読み。ヘタすぎでしょ(´Д`) 脚本というか、文章の内容そのものが良いから聞けるが。また、その内容は、「作り物」感を隠さない舞台演劇的で、日常的な映画っぽくはない。
3話からなるオムニバスで、あまり言われていない、題名以外のテーマは「演じる」ということ。
1話では、親友との会話の中で、親友の今カレが、元カレだと気づいたのに、知らないふりをして会話を続ける。
2話では、大学教授兼小説家のファンのふりをしてハニトラを仕掛ける会話をする。
3話では、知らない人なのに、旧友のふりをし、さらに輪をかけて、それを告白した上で、その親友(レズ恋人)のふりをして会話をしようと合意して、文字通り「演じる」。
なお、劇場では笑い声が多数だったらしいが、私が家で一人で観ている限りでは、全然笑えるなかなった。外した演技というか、すかした演出、というのか。逆に、だからと言って評価は下がらなかったのだが、笑えるから面白い、という加点もなかった。見終えた後で知ったし。