思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

湿地

☆☆☆★

北欧ミステリー。フィンランドだっけ??
彩度を極端に抑えた、地味というか暗いというか、渋い画面。
ジメジメした地下室で起きた、ある父親の撲殺死体が家族に発見されたところから始まる。
音楽的にも凝っていて、男声スキャットが効果的に用いられている。『潜水艦クルスクの生存者たち』よろしく、最初と最後にながれる男声合唱団をフィーチャーしたものだ。しかも、男性警官たちによる合唱団か、または普通の警官たちによるレクイエムというとは、北欧ならではの文化なの?
文化といえば、主人公がタバコ吸いまくりなのも。ちゃんと、相棒が車内で「タバコやめて」というセリフもあるので、自覚的にやってるのだろうが、演出意図はよくわからなかった。主人公が悪徳警官というわけでもないし。
映像作品群としては伝わりにくい、「臭い」をしっかり強調しているのはグッド。悪臭、腐敗臭だけど(^^;)
フード演出としては、登場人物たちが食べている食事が、のきなみ灰色とか、これまた彩度が低くて、まったく美味しそうでない。逆に、唯一おいしそう(に食べている)のが、死体解剖医の食事、というのが面白かった。
主人公は渋いおっさんだし、上司も「ザ・おばちゃん」という、本国での知名度はわからないが、とにかくあらゆる点で渋すぎる映画。ミステリーというか、サスペンスとしても及第点。
アオリにある、「墓に眠る脳がない少女」の理由は、イマイチ弱かったかな。

以下ネタバレ

ミステリーとしてのポイントは、過去のレイプ事件に地元の警官も噛んでいたことと、レイプ犯が、珍しい遺伝病を持っていたこと。それがバレるから脳を持ち去った、というのだが、研究所に保管されていた、というのはどうなんだろう? しかも結局、燃やすでもなく、少女の頭蓋骨に戻すでもない。
レイプされて母子家庭で育った息子が、遺伝子研究者となって、自分の病気かについて調べ、その過程で、実の父を見つけて、結果殺害する、というとは実に『科捜研の女』的。
それと、主人公の娘も売春婦として生活していた結果、妊娠した、というのと重ねているのはちょっとうまいスパイスかも。