思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主

☆☆☆☆

全然期待せずに観たが、めちゃくちゃ面白かった。最初に書いてしまうが、残念な要素は、死神というか、あの世のハイエナというべき、普通の人には見えなくて、オッドにしても見えるだけで触ることもできないモンスターのデザインに魅了がないことくらいか。
なんと言っても決めセリフに限らず、いちいちセリフの言い回しが印象的なのだ。どこまで原作小説のセリフを忠実に拾っているかは不明だが、さすがはベストセラー作家というところ。翻訳してなお、そのセンスが光るんだから、相当のものだろう。ちなみに、スティーブン・キングの映画には一切そんなの感じなかったけどねぇ。
最初は、「きのこ頭の男」にあの世のハイエナが大量発生して群がるところから、何かわからないが、死者がたくさん出る、大きな惨劇が起きることがオッドに分かる。次に、キノコ男の住処を探り、犯罪計画が明後日であるらしいことを突き止める。ここでタイムリミット・サスペンスになり、物語が進むにつれて焦点が絞られる、観客を引き込む構成が巧みだ。
サスペンスまたはミステリーとしてもよくできていて、また、恋愛もの嫌いな私でも、バディ的というか、『仮面ライダークウガ』の一条またはヒロインとの関係みたいな関係性が良かった。
また、リアリティ重視、グロ好きとしては、死体の腐敗をリアルに描いているところにも好感が持てた。死後硬直、おなら、うじ虫、大量のハエ、という順番に腐敗過程が描かれているのだ。
私的に、オッドの俳優が、フロドばりに四角い顔で、似顔絵が描きやすい格好良さ。ヒロインも、クセがなくて爽やかな可愛さ。

以下ネタバレ

終盤は、サスペンス映画として、どんでん返しが続くのが面白い。キノコ男が大量殺人計画の犯人かと思いきや、死体となって発見され、共犯者だと思った警官をショッピングモールで発砲中に殺したは、さらに共犯がいて、しかもそれはちゃんと序盤に登場した人物。ラストにはお約束の爆弾解除カーアクション。
そして、ラスト。恋人とラブラブで暮らしました……と思わせて、実は死んでました、という死者が見えるオッドの設定を最大限活かしたどんでん返しがうまいし、恋人とのハッピーエンド嫌いな私の趣向にピッタリはまった。ただ、数少ない問題点のひとつがこれに関してある。死者とは接触できない設定だったのに、キスしたりしてるやん?! それがなければほぼ☆☆☆☆☆だったかもしれないのに、実に惜しい。