思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

千夜、一夜


☆☆☆

田中裕子主演ということで観たのだが、大事なテーマだが、地味で、観ても「大事なのは充分分かったけど、特に語ることとかはないなあ」という、学校の感想文的なこと以外は書きにくいタイプの映画。
テーマは「特定失踪者」という、これまた拉致被害者でもない、微妙なもの(でも、大事であることは言うまでもないが)。
夫が特定失踪者として失踪してから20年だか経ったものの、未だに帰りを待ち続けている主人公を田中裕子が演じる。彼に想いを寄せるのがダンカン。2年前に夫が失踪した尾野真知子が、田中裕子の元を訪れていろいろ聞く。ダンカンは、田中裕子の母親が亡くなったのをきっかけに、何度目かのプロポーズをするが、「マグロのエサになっちまえ」とまで拒否られる。失意のダンカンはそのまま一人で舟で沖へ。
いっぼう、尾野真知子の夫を新潟で発見して田中裕子が連れてくるが、尾野真知子には同僚との再婚を決意した矢先だった……。
漁師町が舞台ということもあり、『愛すべきひとたち』(うろ覚え)みたいな雰囲気もある。
劇伴がサックスのソロばかりとか、手持ちカメラの立ち位置とか、ドキュメンタリーっぽく撮られている。
田中裕子が自分で尾野真知子の夫に「私は狂ってるんです」と言ったその夜に、(夫の記憶が薄れてゆくのを防ぐために)夫との会話を再現しているなど、わかりやすい脚本。
おしん』とかから、田中裕子には耐える演技のイメージなこともあり、普段の粛々とした生活にも説得力はある。
また、『おしん』『二十四の瞳』からのファンとしては、おばあさんになっちゃったなぁ(´Д`)という歳月を感じたり。母親役との実年齢差はほとんどないんじゃないのかなぁ。
ただ、いくつになっても、声がいいので、その優しい声色に癒される。
私はチャンネル桜青山繁晴さんとかから特定失踪者のエピソードは聞いたことあるので、本作で新たな情報を得ようという目的からは、そこまで観る必要は感じなかったが。「特定失踪者って何?」という人は、観ておくべき映画なのかも。『めぐみ』なんかと並んで。私はそっちは観れてないんだけど。