思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

おらおらでひとりいぐも


☆☆☆★

いちおう田中裕子ファンとしては、観とくべ、という程度の動機。タイトルは東北弁で、「わたしはひとりで生きるわ」という意味らしい。
本作は、いわば平方に孤独に生きる老人の内面を文字通り描いた人間ドラマ。
それなのに、冒頭に、地球誕生から恐竜などがCGで描かれ、NHKスペシャルかディスカバーチャンネルか? と録画間違えたか? と焦るくらい。
その後は、一軒屋の薄暗い居間で、ひとり夕食を食べる田中裕子。カットが変わると、向かいにはご陽気な4人の男が。はたまた家族の団欒が。これ、男たちは夫が亡くなってから作り出した別人格かイマジナリーフレンドまたは自問自答を可視化したもの。家族は、彼女が昔を思い出している映像を、文字通り目の前に演じて映しているのだ。
子どもたちとも疎遠で、普段会うのは病院の先生、お巡りさん、車のディーラーとか。でも実は疎ましく思っているわけではなかったと分かって、おしまい。まあ、プロットだけみれば凡庸な人情ものだが、夫と死に別れた年寄りの内面・本音をユーモアを交えながら描いた、という意味ではオリジナリティがあるかも。
内面や妄想を登場人物と同じ場所で演じる、というのは低予算映画でよく見る手法のように思うが、それを大女優と普通の予算の映画でやった、という意味でも。