思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

LOOP/時に囚われた男

☆☆☆☆

邦題からしてタイムループものであることは分かるので、それだけの知識で観た。タイムループものって、ジャンルものの中では、(どんか作品にも、何かしら、楽しめる要素がある、という意味で)最低限の面白さが保証されている数少ないジャンルでは??
ハンガリー映画ということは、本編で原題が出て、調べてから知った。パソコンで観るYouTubeだと、そういうのがすぐできるのが良いね。『HORIK』みたいな綴りだったはず。そのハンガリー語の意味は、ズバリ「ループ」である。
冒頭に、いきなり地下鉄車内をコップの小銭をジャラジャラ鳴らして歩く乞食という、印象的な場面から始まる。それは後で効いてくるのだが、続いて、エレベーターに乗ると、BGM的に天気予報が流れるので、『ジョジョ』4部のラストエピソード同様に、ここが繰り返しの起点になるのかと思えば、ここはこれっきり(^^;)
本作では、主人公はまやくの売人で、同棲するカノジョが妊娠したのを機に、一人で今回はじめて手に入れた大量のヤクを手土産に町を出ようとする。
アドベンチャーゲーム的に言えば、本作は自分もカノジョも死なず、なおかつタイムループから抜け出す行動パターンを探すミッションもの。
本作が面白いのが、死んだり、ある時間が来たらリセットされるのではなく、仮に死ななかったとしても、いつのまにか起点に戻ってしまう、という、まさしくメビウスの輪的な、抜け出せない構造になっていることにある。これは、ヤクが主人公の部屋にあり、主人公が殺されるのも部屋なので、帰ってこざるを得ない。帰ってみると元に戻っている。
前の周の自分が、ちらりと見えたり、周によっては対峙する、というのが単なるタイムループものではない面白さだ。それいがにも、前の周では単に「なんだこれ?」的にスルーしていたことの原因が、次々に明らかになっていく「アハ体験」は格別の面白さ。
で、抜け出すキーは、そこまで意外でもないし、設定から展開からそのオチまで、なんか日本映画っぽいのだが、よくできているのは間違いない。

以下ネタバレ

カノジョとお腹の子供に向き合う、麻薬の売人から足を洗う、そのために過去の自分を殺すことがキー。あまりにも日本人っぽいかなぁ……。日本人としては不満はないんだけど。
ラストは、忘れかけていた手首の落書きを書いた理由と、直後にその真の意味が明らかになる=ループからは抜け出せていない、のはうまい。