思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

デブを捨てに


平山夢明
☆☆☆★

本書の主人公たちは、どれも貧乏とか借金とか、最底辺の男たちであることが共通している。

『いんちき小僧』☆☆☆★
公園で殴られた後に出会ったのが、麻薬の売人がいなくなった後に、偽物を売って稼いでいる親子と出会う。実の親子でもない二人だが、修羅場に遭う最中で、お互いに複雑な心情が描かれる。

『マミーポコポコ』☆☆★
本書でもっとも嫌な話。人気があるらしい「大家族もの」の番組の取材を通じて、取材する側も、される側も、テレビ業界の裏側の本音の一端が描かれる。本作を読むと、もう、あなたはテレビを観る気がなくなるかも。

『顔が不自由で素敵な売女』☆☆☆☆
これも後に書かれた『猿より時代劇、ヤギより上』と同じく、売女がヒロイン(?)として出てくる。河童のような頭で、カツラを被っている、というトンデモが意見だが、これまたツライ裏面がある……と、今気づいたが、この手法、『北斗の拳』とある意味で同じだよなぁ(^^;) 展開というか構造としては『猿……』の第一短編と同じ。

『デブを捨てに』☆☆☆★
これまた借金で身体極まった主人公が、デブを捨てに行けば、腕を折られずに済む、というとんでもないミッションを負わされる。先の展開が読めないという意味では、これ以上ないのが平山作品だが、本作もまさにそれ。びっくり人間大集合的な大食いや、ゲロビームなどはまだ許容範囲としても、実はデブもいいやつだとわかって駆け落ち、みたいにもならない。悲惨極まりない状況と展開だが、ブラックユーモアと、幼少時のデブる前の写真を後生大事に持ってるとか、ほろりとさせられるニクイ描写もある。


デブがスマホを操作する場面があるが、ミシュランマンみたいなデブなら、押せないやろ。私でもしょっちゅう周りの枠を押しちゃうのに。