思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

アオラレ


☆☆☆★

原題は全然違うが、冒頭にはアオリ運転を中心としたアメリカの車社会の問題が、テレビのニュースというかたちで提示されるので、邦題としては全然間違ってはいない。ただ、映画のテイストとしては人間怖い系ホラーなので、ちょっと違うかな……。カタカナにしたことでJホラー感を醸しているけど。
てっきり『激突!』のリメイクかと思ったが、似ているようで、結構違う。寝坊したことで、車で息子を学校に送るのが遅刻しそうでイラついた主人公の女がら、信号が青になったのに発車しない前の車にクラクションをキツく鳴らした事から、恨みを買って復讐される。「ツケは高くついたな」というやつ。主人公がだらしない人物なので、自業自得にしか思えない、感情移入しづらいのが問題。寝坊したとか、夫とうまくいっていないとか、問題を作らず、特に問題もない、ごく普通の平凡な主夫、とかに設定できなかったもんかなぁ?(´Д`)
とは言え、襲うほうも、離婚騒動から妻を殺して家に火をつけるような極悪な男(激太りのラッセル・クロウ)。中盤に主人公の友人の弁護士とレストランで話す場面では、最初人の良さそうな雰囲気で油断させるあたりの演技(作中人物に対しても観客に対しても)が上手い。そこからのサイコ全開で、殴ったり刺したりするシーンのギャップが、本作の白眉。
もう一つは、カーチェイス中に、「ながら運転」してる連中が次々と巻き添えで大事故に遭うこと。もちろん、中には何も悪くない車も多数だ。
最後には、特に頭を使ったトラップやひっかけによらない、単なる揉み合いで、いちおう2対1とはいえ、対格差からすれば、勝てたのは偶然。
それと比較して、中盤に、犯人が包丁を構えた弟に、人質を抱いたまま突っ込んで、弟自身に人質を刺殺させたシーンのほうが意外かつ衝撃的。本作は映画としてのクライマックスの前に、演出的なクライマックスがあって、クライマックスが全然盛り上がらない、というのが残念。これが主人公も息子も、冷酷に殺されていれば、本作は『ハロウィン』的なカルトシリーズ化に成功していたかもしれないのになぁ……。