思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

完全なる飼育 étude

☆☆☆★

80年代の雑誌で広告を見た記憶があるが、竹中直人が出ているのが同じくらいで、別物らしい。ちょっと調べたら、セルフリメイクの嵐というか、シリーズ化されたいたらしい。
本作は、高い評価を得ながら姿を消していた女流舞台演出家(月船さらら)が、復帰作『完全なる飼育』を準備中ということを聞きつけ、ある若手俳優市川知宏)がオーディション会場に来る。月船の無茶な条件(「裸になって3回回ってワンと言え」って、センス古すぎ!)を呑んで舞台に参加することになったが・・・。
まず、個人的な問題として、月船さらら(AV系の女優かと思ったら、元宝塚だって(^_^;) 正反対やね)が『ダメンズ』の倉たまにしか見えず、市川知宏の方はチュートリアル徳井にしか見えなかった、まあどちらも本人だったとしても大した問題じゃないけど。特に、ラストは、実は貴族顔なので、マッチしていたと思えた。
アングラ系の芝居には疎いので、こういう過激演出が何のために行われるのかよくわからんけど。「人間の本質を描き出す」とか、そういうことなのかな?
まあ、そういう無茶なSM的関係から、M気質に目覚める、というのはありがちなので、そこまで「衝撃」という感じではなかったものの、ルックがしっかりしているので、なかなか見応えはあった。特に赤と青のコントラストを駆使した照明は見事。
姫役の金野美穂とのやりとりは面白かった。突然レイプしだすのは流石にどうかと思ったが。倫理的にじゃなく、物語的関連性が。本来は本作の登場人物はこの3人+1人(市川の恋人)だけで良かったのだ。特にプロデューサー役のおっさんなんて、エロ要因でしかないし、竹中直人も同様にギャグ要因でしかない。でも、竹中の方は調べて知ったが、シリーズの顔(金子修介映画における蛍雪次郎みたいな?)だから、しょうがないのか。
真面目な批評としては、月船が以前、どんな演出をしていて、なぜ表舞台から遠ざかっていたか、というのが描かれていないのは物語的に足りない要素では? 後は、終盤に市川が逆転するところで、月船と和姦するところで一気に萎えた。そこは姫との場合同様にレイプでしょ? というか、そのための伏線、じゃないと姫をレイプする意味がわからん(ピンク映画としてのサービスシーンでないとすれば)。
脚本的には、まだオーディション段階の脚本を、第三者が入手できるのはおかしいのでは? 演劇界ではオーディション希望者にチラシ感覚でばらまいているものなの??
ラストシーンで、月船と市川が舞台でラストシーンを演じるところで紙吹雪が舞って、無人の客席から拍手が起こるのは、『吸血姫美夕』2話のラストを連想した。ただし、本作では誰が紙吹雪を落としているのか? というところがどうしても気になる。本作に決定的にかけているのは美術や大道具といった裏方。いくら稽古期間といっても、一人くらいは控えてるでしょ? セットが壊れたり、急遽「○○付け足せ」とか言われたらどうするの?(むしろ演出家の性格設定的に、一言もなかったのがおかしい) 実際に、セットの一部を壊してたし。最初に、どうせなら3人だけでいい、と書いたのは逆に、そこまで割り切ったら? という皮肉でもある。