思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『シン・ウルトラマン』☆☆☆★

<ネタバレ注意>

そもそも『初マン』はオタク的教養知識だけで観た事はなく、『シン・ゴジラ』を上回ることはないだろうというスタンスだったので、期待していた以上ではあったが、手放しで絶賛できない感じ。
シン・ゴジラ』はクライマックスで流れた『宇宙大戦争』のテーマでドン引きしたのでそれまで100点だったのが70点くらいになったが、本作では時折入るiPhoneの映像や、巨大化長澤まさみとかでサクサク削られて70点、という感じか。
シン・ゴジラ』では80点スタートから加点方式で盛り上がったのだが、本作はプレーンな50点から「思ったより良い点」と「あかんなぁ(´д`)」という点が、折れ線グラフにするなら右肩上がりとか下がりではなく、ジグザグだったので、終始モヤモヤしていた。
まず、ウルトラマンのプロポーション、ヒョロヒョロ過ぎない? まるで上下に30%くらい引き伸ばしたよう。赤いラインも直立時は良いが、腕・膝を曲げた時に関節とずれて曲がるのでめっちゃ気持ち悪い。顔ものっぺりしていて、耳が四角いのもアタリ(造形するための目印)のよう。要するにグレイ(いわゆる「囚われた宇宙人」)みたいな、外星人としての異形感を強調したのかもしれないが。怪獣が歩くとドンドン音がするのに、ウルトラマンの方は音はするが、煙とかは出ない。これは、重力に囚われないという演出、差別化なのだろう。
公安関係の描写は、麻生幾の小説みたいで良かった部分。外事警察を「ソトゴト」と呼ぶのに何の説明もないとかもグッド。極秘事項を「ウルトラ」と呼ぶところからウルトラマンと名付けた、というのも納得。
怪獣が尺は短いが、意外とたくさん出てきたのは良かった。一番のサプライズは『シン・ゴジラ』準拠のゴメス。
本作でドン引きしたのが、長澤まさみの巨大化。もちろん、原作でもアンヌ・・・じゃなかった(ついモロボシダンとか、『セブン』とごっちゃになる。どっちも観てないから)フジ隊員が巨大化するのは知っていたので、それをやってるのは分かるが、どう見てもただ合成しただけやん。構図も樋口真嗣がやってるとは思えない平板さ。どう考えても、『ガメラ1』的に下から見上げるアングルでしょう?! 原作の構図そのまま、と知って理解はできたが、だからと言って納得はできない。現代の技術で同じ構図なのにリアル! とするのがアップデート(完コピする意義)でしょう?!
外星人周りは特撮ファンでなくても楽しめる部分。予算もかからないし、一石二鳥。
あまり言及する人がいない(観てない/知らないから?)けど、樋口監督が撮った『MM9』と近い印象。これに限らず、低予算感は通じるものがある。考えたら、ほとんど密室劇と言って良いくらい室内シーンが多いし。
ゼットンには誰もが驚いただろうが、あまり人が触れてないところを。造形がまんま『エヴァ』の使徒なのは置いといて、地上から軌道上の超巨大物体を見上げるのは『トップをねらえ!』のエルトリウムでできなかったことを見事に表現している。
ラストバトルは、金のない中で、ロングショットだけでギリギリお茶を濁した感じ。ここで『エヴァQ』の冒頭みたいな派手なアクションがあれば盛り上がったろうになぁ。中盤の戦い(特にザラム星人とか)を減らしても、ここに全力を投入すべきだったのでは?
倒した後は、特撮の吊りのように見える飛翔モデルと、『トップをねらえ!』のブラックホール爆弾炸裂を思わせるあたりが面白いが、ここもやっぱり、素直に盛り上がれないんだよなぁ。常に元ネタを探したり、あざとさ、製作事情を伺わせる。
そう、全編に渡って素直に楽しめない、没入できないのは、ほとんどのシーンやカットに「庵野や樋口はどう考えてこのカットにしたのか?」と邪推せずにおれないのだ。オタクの宿痾なのかも(^_^;)
逆に考えると、そういう余計なことを考えない人の方が本作を素直に楽しめるのかも。

2022年 日本