思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

散歩する侵略者


☆☆☆★

変なタイトルだが、Jホラー界では名の通った黒澤清監督ということで、いちおうチェック。とはいえ、『クリーピー』とか、あんたり面白く感じなかったので、期待はしてなかった(^^;)
『盗まれた町』系の、人間入れ替わりものだが、冒頭から、隠さず打ち出しているのが特徴。なんせ、タイトルからネタバレしているというか、正々堂々内容を全面に押し出した作品。
とはいえ、分かるのは観客だけで、登場人物は知る由もなく、怪我や病気で、気が触れたとしか思われず、登場人物のみならず、観客もイライラさせられることになる。
また、個人的に、松田某と、前田敦子は好きじゃない(色んな意味で気持ち悪い)俳優なので、その意味でも序盤は観るのがしんどかった。
宇宙人の妻役が長澤まさみで、彼とは別行動をとる宇宙人ペアに密着する記者役が長谷川博己なので、『シン・ウルトラマン』か『シン・ゴジラ』というような既視感が(もちろん、あくまでも私が観た順のはなし)。
終盤には銃撃戦もあるが、ちょっとだけリアリティがあるのが、良くも悪くもあって、なんとも悩ましい。
長谷川博己が、ちかくにいる大衆に、宇宙人侵略の警鐘を鳴らす(演説する)が、嘲笑されるでもなく真剣に聞いているでもない、リアクションだったのがうまい。どちらにしても、「リアリティがない」という反発をする層が一定数いるだろから。
斥候となる宇宙人が先にいて、合図したら一斉に攻撃する、というのは既視感のある設定。『どらえ のび太と鉄人兵団』もほぼそんな感じだったような……。
概念を奪っていく、というのは、低予算映画が、『ジョジョ』のスタンドバトル的な展開。当たり前に使っている言葉や概念を、文字通り見直す、というのはこれまた子供向けのコンテンツではよくある。ただし、中盤に、教会を訪れた宇宙人が、讃美歌を聴いて、「愛とは?」と質問する展開は問題あり。それに答える、歌っていた子どもも、牧師にしろ、「恋愛」的な愛としてしか語らないのだ。敢えて教会に設定しているんだから、キリスト教的な「神の愛」じゃないと。アイツらは教義をまるでわかってないアホか?! としか思われないでしょ。日本キリスト教会(そんなのがあるのか知らんけど)からクレームが来てもおかしくないレベル。愛について入れたいなら、序盤の前田敦子が出ているシーンか、百歩譲って教会にこだわるなら、結婚式の最中に出くわす、とすれば良かったのだ。

以下ネタバレ

ラストは、なんか『宇宙人王さんとの対話』を連想したが、攻撃された割には被害が、普通の戦争の航空機爆撃程度。「3分で人類全面だ」とか言ってたのは何だったんだ? 攻撃指令がキャンセルされたならともかく、攻撃は実行されてる。どっちかにしろよ、と思う。赤い雲から戦闘機か巡行ミサイルが襲って来るみたいなビジュアルは良かったのに。
土壇場になって、「愛」という概念を知って、戦争中止したくなった、というのはにほんの子供向けアニメみたいなベタベタな展開でがっかりした。ラストが、冒頭とは逆に、夫が妻を介護する、という対になっている構成だけは良かったけど。