思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『空母いぶき』
☆☆★

上の原作と、『シン・ゴジラ』以後の映画なのに、やっぱり危惧した通りの結果。
原作では、中国が尖閣諸島を取りに来る、という状況を徹底的にリアルにシミュレートしたストーリーが白眉なのだが、本作では、そのどちらもオミットしてしまった。東亜連邦なる、地図上では台湾の近くにあるらしい架空の新興国が、これまた沖縄諸島の近くにある架空の島を占拠する。
その時点でダメダメになるのはほぼ確定。
とはいえ、原作者かわぐちかいじの真意は、日本人の国防意識の欠如に警鐘を鳴らすことなので、設定が全く変わっていても、そこさえ押さえていれば許せる。
が、やっぱり90年代の日本映画そのままの、お花畑的結末。
一部には、原作を反映した、ちゃんとした国防理念を語るセリフが残されているのが、かろうじての救いである。

映画としては、佐々木蔵之介の過剰な演技が鬱陶しいし、西島秀俊がいちいちニヤニヤしているのもムカつく(^_^;) 関西弁の艦長も、原作通りではあるのだが、クライマックスならともかく、何回も何回も言うので全然効果を上げていない。
CGもゲームに毛が生えた程度。
何より、準主役である空母いぶきの外観にリアリティがないのが致命的。

ミリオタ的には、魚雷やミサイルの発射や軌跡は見所と言えるが、護衛艦からの垂直発射ミサイルの構図が何回もあるのにどれも一緒というのは面白くない。
F35の空戦でも、いくらヘルメット・マウント・ディスプレイ付きのヘルメットをかぶっているからと言って、目のドアップだけでは誰が誰やら区別つかない。まだ字幕で見たからセリフの前に名前が出るので助かったが、劇場で見たらさっぱりわからなかっただろう。
本田翼の前(画面的には後ろ)に、炎上する護衛艦があるカットは良かったが。
それもそうだが、本作には、ほぼメカはCGなのだが、模型っぽいカットがいくつかあった。本当に模型を使ったのか、敢えてやってるのか、単に下手くそなのか、どれなんだろう?
ストーリーでも、救出した敵パイロットが、同じく救助された自衛官を撃ち殺す、なんてシーンはいらんやろ・・・。これはある意味、本作で最悪の改変かも。