思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『後悔と真実の色』読了

刑事ものであり、本格ミステリであり、上級の小説である。
まず目を引くのが、刑事ものとしての面白さだ。松本清張のように無個性的な頭数が並ぶのでもなく、黒川博行のようにキャラがたち過ぎているのでもなく、吉村達也の志垣と和久井のように漫画的でもない。
10人近いレギュラー級の刑事たちをしっかり描き分けつつ、連続殺人事件の謎も併せ持っている。
本格ミステリとしての本作唯一の瑕疵は、伏線があまりに明確なので、フーダニットとしての驚きはほとんどないことだ。
これは他の作品のアベレージから推して、作者の力量不足ではなく、本作がミッシング・リンクものまたはワイダニットを主眼として書かれているからの結果だろう。
終盤の展開は長編にふさわしい(ミステリというより小説としての)カタルシスに満ちており、しかも上述のミッシング・リンクワイダニット、人生とは?家族とは?職業とは?善とは悪とは?というテーマが一体となって終幕を向かえる。
ネットを駆使した刑事ものという点では〈症候群シリーズ〉に近いとも言えるが 、貫井ちゃん(テレビ『探偵X』で竹中直人が(たぶんアドリブで)言ってるのを見て影響された(^^;))の作品には推理小説として外れがないので、本作も安心してお勧めできる。