思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

MEN 同じ顔の男たち

☆☆☆★

気になるタイトルだったが、ようやく観られた。
サマーハウスものというか、異邦人ものというか、日常生活から離れてやってきた家で、恐怖体験をする系。
主人公は、夫とのいさかいから、目の前で自殺され(嫌がらせなのか、たまたまたなのか。ちょうど窓の外を見ているタイミングで上の階から飛び降り自殺するのは現実的には極めて難しい賭け)、気分転換に、田舎で過ごそうと、良い感じの(自分このみの)一軒家を借りた。
大家さんとの顔合わせも済み、近所の森を散歩していると、遠くから彼女を見つめている、全裸の男が。気味が悪くなって、家に帰ると、男は庭に出現し、閉めた玄関の扉の郵便受けから手を差し込んで来た。警察に通報して逮捕され、ほっとしていたのも束の間、散歩の途中で立ち寄った教会に置いてあった牧師机(?)に彫られた意味ありげな男女の彫刻を目にしてから、さらに奇妙で恐ろしい現象が彼女を襲う。
レートがR15+なのは、全裸の男のせいかと思ったが、ぼかしはあるし、セックスシーンがあるわけでもない。終盤の腕を刺す場面のせいかと思っていたら、そこから立て続けに、とんでもないグロいシーンがあり、どうもこれっぽい。でもまあ、これを見てエロいと思うのは、かなり性倒錯したヤバいやつだろうから、別にPG12でもいいんじゃないの??
まあ、そこを子供に説明を求められたら、困るだろうけど、普通に、怖さを追求して、超自然的なことが起こってる、ってことでいいやん(^^;)
A24スタジオらしく、ルックや、撮影の美しさは、自然中で小さく撮られる人間と合わせて、アート的にも観るに耐える画面。
主人公のショートヘアの女性の寝癖が気になったんだけど、そういう自分に対しての認識に抜けたところがある、という演出なのか、流行りの髪型なのか、判断に苦しむ。
『エクスペリメント』みたいな、スタイリッシュで、変な映画という意味でも、『ビデオドローム』や『遊星からの物体X』などのボディ・ホラーとしても、癖の強い映画好きなら、一見の価値あり。

以下ネタバレ

邦題がネタバレなのは問題だと思うが、本作に出てくる男は、回想シーンでの黒人の夫以外(そういや、現実における、白人と黒人のカップルって、どれくらいの割合なんだろう?)は、ひとりの白人のおっさんが、髪型を変えて演じている。『ザ・ワン』におけるジェット・リーというか、CMによくあるやつというか、とにかくコメディというのか、不気味というか。それが明確になるのが、酒場にいる色々な立場の人が、全員同じ顔なこと。そこでは、主人公は、それに気づいていなので、我々観客は、それが作中世界での現実なのか、主人公の主観なのか、分からない。最初は分からなかったが、少年まで、おっさん顔(もちろん後から合成しているのだろう)なのだ。このへんは、『ジョジョリオン』のつるぎのスタンドが元ネタ?
これが、自殺した夫の顔、というのならまだ主人公のトラウマの映像化として理解できるとだが……。
ラストには、全裸の男が再び出てくる。額に葉っぱを差しているのは、アダムのイメージなのか?
そこからなんと男のクセに股間から出産し、しかも出てくるのは同じサイズの同じおっさん! 臍の緒がついているわけでもなく、出てきたらすぐ生まれたての子鹿みたいに立ったと思ったら、もうお腹が膨らんでいて、次はお腹が女性器に開いて出産、また繰り返して、止めは額から出産。いや、何を書いてるのか理解不能だと思うが、もはや中村なんとかの成人マンガを思い出すようなトンデモ描写だ。