思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

戦火の勇気

☆☆☆

湾岸戦争で起きた、実在の出来事を元にした映画ということで、『閉ざされた森』または『英雄の条件』みたいな内容を期待したのだが、ちょっと違った。
基本は、戦士したことで、女性兵士で初めて表彰されることになったが、彼女が戦った戦闘を詳しく調査する事を命じられたデンゼル・ワシントンの話。
メグ・ライアン演じる女性兵士は、最初は写真でしか出てこないのだが、調査が進むにつれて、戦闘場面が回想シーンとして小出しにされる。関係者の証言は、微妙に、食い違い、デンゼルはそこに名探偵よろしく追求の手を突っ込んでゆく。まるで『羅生門』というか、『閉ざされた森』みたいなスタイル。
事実だとしたら仕方ないのだが、デンゼルがもうひとつ感情移入しづらい人物なのだ。冒頭で描かれる湾岸戦争従軍時のエピソードとして、味方の戦車を誤射して、兵士を1人殺してしまい、その罪の意識か、酒に溺れている。そのくせ、調査対象には、毅然を通り越して、パワハラ的な強圧性を見せる。家族とも、幸せな家庭生活を送るというわけにはいかない。別に、探偵役に物語的な障害を入れなくても良かったんじゃないかなぁ。
本作は、20年くらい前の(『それこそプライベート・ライアン以前』? どうでもいいが、あの邦題に倣うなら、本作は『キャプテン・ライアン』になるのかな。原題は邦題の直訳で、ほぼ同じだけど)作品ということを差し置いても、さまざまなビジュアル面において、ぬるい。
まず、画面のルックというか撮影というか、映像が全体に締まりがない。ミドルトーンか明るめに寄っていて、黒に締まりがないのだ。80年代の映画みたい。
メグ・ライアンの前髪が長すぎる。目にかかるのにそのままにしてるなんて、まるで日本映画みたいな適当さだ。何ヶ月もゲリラ線を奥地で戦っているとかならともかく。百歩譲って、他の作品の兼ね合いとかがあるなら、髪を結びなさいよ(´Д`)
ミリオタとしても、冒頭の戦車戦はイマイチ。エイブラムスが5、6台登場するのはいいが、なんか気持ち悪い。なんかチビ丸戦車みたいなのだ。『秋山優香里の戦車映画講座』によれば、センチュリオンを改造したものらしい。暗視装置の映像は、『パトレイバー2』みたいでそれなりに格好良かったが。ちなみに、デンゼルが戦車長を務める戦車の砲手は『ロード・オブ・ザ・リング』のサム?
敵側には、T-55っほいのが出てくる。史実通りなら、こいつもいただろうけど、やっぱりT-72では?
戦場にはA-10も出てくるが、これCGっぽい。でも、ナパームの爆炎は格好いい。爆導索か? というくらい線状の炎だけど。
ネタバレ的なことというか、真相については全く触れていないが、はっきり言ってとうでもいい感じ。デンゼルにもメグにも映画的な魅力がないんだもん(´Д`)
若きマット・デイモンはオランウータン顔だし。本作でいちばん魅力的な登場人物は、証言の鍵を握る、ボクサーのインディアン系の兵士だった。