思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

白蛇伝説

☆☆☆★

ジェット・リー映画のコンプリートを目指している私だが、何故か抜けていた作品のひとつ(あとはアクションなしのやつ『海洋天道』?も未見)。
いちおう主演ではあるが、老師ということもあり、登場頻度は『スターウォーズ4』のベン・ケノービ的な比率。
なんとも珍妙というか、へんなバランスの映画で、悪く言えば方向性がバラバラ、良く言えば、いかにも香港映画らしい、色んな要素をてんこ盛りした作品。
いちばん近いのが、チャウ・シンチーの『最遊記』だろう。わりとCG感バレバレのCGを多用した、ファンタジーかつ幻想的な鮮やかな色調という点では『PROMISE』もかなり近い。CGの、動物が喋るという点では『スチュアート・リトル』。ジェット・リーがワイヤーで空を舞うあたりは『天空の剣』や『ドラゴンなんとか』(砂漠にワープゾーンが開くやつ)。あとはこの手の第一人者でもあるツイ・ハークの「ディー判事」シリーズ一作目や、『ライズ・オブ・シードラゴン』シリーズにも近い。CGのクオリティは比べ物にならないが。
そんな、荒唐無稽ファンタジーだが、物語の主軸は、白蛇の妖怪(女)と、医者の卵の青年の恋物語なのだ。人間の男に一目惚れした妖怪が、人間の姿になって結婚する。しかも騙すのではなく、時には自分の命(精気)を削って人助けまでする。いかにも中国の故事らしいストーリー。古典に詳しくない人には、韓国ドラマ的な純愛ものといえばわかりやすいか。
そこに、悪い妖怪退治をして回る、ジェット・リー演じる僧侶と、その弟子がコウモリ妖怪に噛まれて妖怪化する、というさぶプロットが加わる。おまけに、その弟子を好きになるのが、白蛇の姉妹である緑蛇の妖怪(ちなみに名前は青青と書いてチンチンと読むんだけど)。
最後には、『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』をパクった大洪水シーン(何せここだけミニチュア特撮だからね)まである。
クライマックスの、僧たちが坐して教を唱え、洪水が来ても途中でやめられないというのも、ある意味ではバカバカしいが、これもなんか感動させれてしまう迫力があるのだ。
そうそう、肝心のジェットのアクションは、空中技が多いが、華麗というより、重厚な感じ。特筆すべきものはないが、不満というほどでもない。
また、冒頭の掴みとして、ジェット対ビビアン・スー演じる魔女の戦いがある。まあ、ビビアンは空中に浮いて羽衣を降っているくらいで、たいていはスタントダブルだが。
構成としては破綻しかけた脚本ではあるが、随所に出てくるセリフは、意外と含蓄があったり、グッとくるものが多いのが、愛すべき怪作になっている所以だろう。