思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ドラゴン・ファイト』
☆☆☆☆
めちゃくちゃ凡庸というか、超テキトーな邦題(^_^;)
アクションシーンだけは何度も見ていたけど。久しぶりに最初から最後まで見た。
冒頭、舞台説明となるアメリカの空撮を除くと、いきなりジェット・リーの演武から始まる。じっくり見せてくれ、これがまたファンにはたまらん。劇中の舞台が、なんか市民会館に急ごしらえで作ったようなひな壇と、申し訳程度に両サイドに花が添えられていて、貧乏くさい。これが制作費の少なさを象徴しているとも、中国武術団(雑技団ならぬ)のアメリカ興業の実態をリアルに表しているとも取れる、絶妙な塩梅(^_^;)
ここで、ジェット・リー 演じるラップ(変な名前)のライバルであるワイ(変な名前)が、演武中に槍を落とすのだが、ラップはそのままアドリブで続けようとする。これで、ワイがツキがない、あるいは肝腎のところでミスをする人物であることが表現されているのがうまい。
ラップはお人好しで、どことなくジェット・リーそのものをモデルにしているような気がしないでもない。
誤解から殺人犯にされてしまい、帰国の飛行機にも乗り遅れる。警官から逃げたと思ったら、ワイが成り上がったマフィアからも追われることになる。
匿ってもらうことになったチャウ・シンチーとおじさんも殺されてしまうし、とにかく主人公ラップはヨーロッパ映画か?!というくらい不条理に不幸の連続に見舞われる。ラストではとどめとして、いい関係になったカンボジア(だっけ?)のマフィアのボスの愛人が戻ってきたらすれ違い(^_^;)
チャウ・シンチーがコメディ・リリーフなのだが、とにかく目の前しかみておらず、しかも自分のことしか考えていないお調子者で、全く感情移入できないムカつくキャラ。一応ラップのことは親友とは思っているようだが・・・。完全に自業自得で麻薬取引に失敗してマフィアに殺されるので溜飲は下がるのだが、かといって、その怒りでラップがリミッターを外して最強になる・・・というわけでもない(^_^;) 一応、おじさんの方を殺されたことでワイと対決する決心を固める、というくらいの役回り。
ワイを取り立てたものの、ライバルとして意地悪をするチャイナマフィアが同じくマフィアの仲間に殺されたり、ワイが同じくそいつに殺されたりと、香港映画ではおなじみの被植民地的差別描写が出てくるのも興味深い。アメリカ進出作品なのに(^_^;)
アクションは冒頭の演武を除けば、ストリートファイトを基本としたリアル系。ラップとワイがカンフーの達人ということで、それとのミックス的なテイストになっている。『阿羅漢』の船内バトルみたいな感じ?
クライマックスのバトルがやはり見どころで、カンフー的な動きと、ストリートファイトを合わせたスピーディーなアクションが堪能できる。この辺だけは何度も見てしまう。
ドラマ的には、ワイと戦っていたのに、マフィアの用心棒(ラテン系?)たちが乱入してきて、二人はバラバラに戦うことに。おまけにワイはそっちに殺されてしまう。ワイが拳銃を数発食らっても戦っている不死身っぷりは香港映画的なノリだが(^_^;)
完全に忘れていたが、エンドロールでは、カットされたシーンや、別テイクみたいなカットの連続で、ちょといい映画風の感じ。結局は本作は、異国の地で運命に翻弄される一人の男の人生を描く哀愁映画なのだ。