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某YouTube番組で、毎年一度は観る映画としと『キス・オブ・ザク・ドラゴン』が挙げられていたが、いや、こっちやろ?! というマイ・フェイバリット映画がこれ。
スタイリッシュなアクションの撮り方、最初から最後まで、人間ドラマの合間合間に入るアクション、中山忍の萌え(^^;)など、まったく隙のない構成である。
いちおう、右翼的に、歴史的なチェックを入れるなら、八十年代の香港映画であること、和製ドラゴンの倉田さん、中山忍ほか、何人かの日本人が主役級で出ている、実質的な日香(とは書かないか? 日本と香港)合作映画であることもあって、歴史を強引に捻じ曲げて日本そのものを悪役にしていないことも良し。とはいえ香港(中国)目線なので、日本が大陸に侵攻している、ということになっているが、倉田&中山は右翼的日本人から見てもフェアな人物として善人に描かれているのに好感が持てる。
では悪役はといえば、日本軍人全般と、大尉くらい。面白いのは、最初に遺影でしか登場しない、主人公チャンジャンたちの師匠ファ・ユンジャ(後の『スピリット』の主人公で、これまたジェット・リーが演じる。本作では漢字音読みで表記される)を倒した芥川も、単なる悪役ではなく、純粋な武道館として、毒をもったことを知らなかったことだ。
そしてドラゴン倉田は、まさしく純粋な武道家で主人公の恋人・中山忍の叔父。結婚していたら、義理の父になっていた人物。彼はある種、主人公のメンターとして配置されている。メタ的には、ゲストなのだが、彼とリーとのバトルは中盤の山場。メンター的といいつつ、試合後と、特には成長したりしないのだが(^^;) アクション映画的には、大物ゲスト、という扱い。
物語的には、本作は実はミステリー映画でもある。主人公が留学中に、試合で死んだ師匠が、実は毒を盛られていたと墓から死体を出して解剖し、毒殺犯人を探す。実行犯と主犯は別で、実行犯が先に犯人に仕立てられて自殺したことにされる。で、唆した人は黒幕に殺されるが、その死体は、ラスボスの残虐性を表現するためでもあり、ラストに主人公を救うための身代わりにもなってくれた。この視点から評価されることはまずあり得ないアクション映画なのだが、実はよくできたミステリーなのだ。