思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

証拠物件 全滅


☆☆☆★

原題も『EVIDENCE』と同じ。タイトルは、この文字が書かれたテープを大写しにする、という形なので、タイトルなのかどうか微妙ではあるが。
冒頭は、警察の現場検証の場面をバレット・タイム風に映す、という不思議なシーン。『マトリックス』のように、動いているのかと思いきや、完全に時間の静止した空間を、カメラだけがゆっくりと浮遊するのだ。こういう不思議な時空を描くのかと思いきや、後には一切出てこない(^^;) 単なるオープニングの一種だったようだ。
これが、本作のメインとなる「現場」。朽ちた車とかもあるので、爆発関連かと思いきや、殺人事件らしい。
物語は、この現場で回収された、ケータイやビデオの映像を検証する警察と、視点を共有する形で進む。まさしくファウンド・フッテージもの。現場にあったカメラは、被害者が映画監督志望で、ドキュメンタリーを撮っていた、ということで、事件に関係なさそうな日常や、旅行の道中を見せられることになる。もちろん、この手の設定の映像の常として、画面はブレブレ。映画館ならそうそうに酔って、見続けられなくなりそうだ。YouTubeでの、ながら見だったので助かったが。
『ブレアウィッチ』なんかと違って、デジカメなので、夜になると暗視装置の画像になったりして、気分転換と、殺人犯がどこから襲ってくるか分からないスリルの演出にも一役かっている。殺人方法も、溶接のバーナーで手足を切断して燃やす、という派手なもの。
スラッシャーでも見たことない殺害方法だけど、確かに力がいらずに殺害できそうだ。ガスが電力の供給方法の問題はあるけど。軍隊で使う火炎放射器より的を絞れるし。
100分と短いし、予想していない意外なラストであるので、意外と拾い物。短めなのは、画面酔い対策でもあるのかもしれないが。

以下ネタバレ

まず驚くのは、「全滅」とサブタイトルがついているのに、生存者がいること(^^;) 序盤で生存者が一名いる事は語られていたが、「精神的ショックが大きすぎて事情聴取できない」から、と証拠しらへから初めていたのを、手ブレだらけの証拠映像を見続けている間に忘れているのだ。これは終盤に、事情聴取することで改めて気付かされる。
本作は、どんでん返しミステリーとしてもよくできていて、犯人は分からないまでも、証拠はしっかりと提示されていて、フェアではある。拾い物と言った所以だ。

以下、さらに核心的ネタバレ

犯人は、最初はバスの運転手の黒人(見たことあるなぁと思ったら、『マトリックス レボリューションズ』でパワードスーツに乗って活躍してたミフネ将軍だった)かと予想したら、舞台女優に舞台のカーテンコールに乱入して振られた男。それで警察が記者会見で発表したら、実は証拠物件のSDカードじたいが編集されたもので、ドキュメンタリー監督だった女とその女優が生きている、というものだった。ここで、溶接トーチという、力のいらない凶器である伏線が生きて来るのだ。
真相ということで、証拠物件以外の映像が映るのは、賛否の分かれそうな部分だが、編集前の映像だと考えれば、ギリギリセーフか。そのために、本作はファウンド・フッテージだけで構成された映画ではなく、それを調べる/見る警察の視点を入れているわけだから。
序盤に、ビデオカメラに撮られた男が「これは編集できないんじゃ?」という手がかりを入れて(残して)いるし。これ、完全犯罪を目論む犯人なら、消去しておくべき部分だが、これは警察への挑戦状なのか、映画をみている観客への親切なのか、メタ度合いの判断が悩ましいところ。