思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

グランツーリスモ


☆☆☆★

原題通りなんだけど、誤解をあたえるタイトルはなんとかならなかったのか。ゲーム『グランツーリスモ』のトップゲーマーを集めて、実際のレースに出そう、というプロジェクト「GTアカデミー」がその舞台。しかも実話。『GTアカデミー グランツーリスモのゲーマーがプロレーサーになった話』とかでもいいくらいじゃない?
まるでワンクールのドラマの総集編のように、いろんな要素や細部のテクニカルな情報、ライバルたちとのドラマなどをばっさりカットして、たくさんのプロットを駆け足で通り抜けた感じ。
吹替4DXで観たけど、やはりカーレースものとの相性はベストマッチ!
比較してみると、『フォード対フェラーリ』のレース演出がよくできていたことがよく分かった。社長をレースカーに乗せて加速やGの凄さを実感させたり、コースのポイントを子供に解説することで、観客にも飲み込ませたり。
ゲーマーだから体力がない点も、しっかりレースの合間にトレーニングのシーンをいれることで納得できるし。また、誰も言ってないが(差別とか言われるから?)、主人公が黒人(作中の俳優が事実通りなら、黒人と白人のハーフだけど)である、ということも体力的には有利だったのかも。
レースものとして、金ピカのランボルギーニアヴェンタドール(さすがに金ピカは映画オリジナルだよね?)を設定することで、それより前にいるか後ろにいるか、という判断基準ができるのはありがたい。
メカ好きとしては、ライセンスを取るまでの日産GTRから、ルマンのF1(?)に変わると、なにがどう違うのかを説明して欲しかった。そもそも車も走り方も、全然戦略が違うだろうし、チームメイトとの連携とかも練習したに違いないのに、バッサリカット。
本作は、主人公の熱血スポ根感動ものとして、要らない要素は徹底的に削ぎ落とされているのだ。主人公が家族からダメ人間扱いされていたこと、チーフエンジニアは元レーサーだが挫折して、現在は金持ちボンボンチームのエンジニアだったとか、「負け犬たちのワンスアゲインもの」として設定されているし。それに素直に乗れる人は絶賛しているが、私のように、メカニカル&テクニカルな部分に興味がある人には物足りない作品になっている。どうも、車に対するフェティッシュがないのだ。せっかくのルマン用のマシンが登場したのなら、前から後ろまで、舐め回すようなパンショットを入れないと!(^^;)
また、ヒーローものとしても、物語の冒頭に、主人公がどれだけ凄いゲーマーなのか、ぶっちぎりで勝つシーンとか、目をつぶってでも完走できるとか(実際にできるか知らんけど)、そういう圧倒的なところを描いてほしかった。

以下ネタバレ

ドラマとしては、チーフエンジニアがレーサーを引退した理由を主人公あるいは観客にも明かさずに引っ張って、主人公が死亡事故を起こしてどん底にいる時に話すとか、どう考えても映画的脚色てましょ? というあざとい盛り上げ。まあこれは「アリ」なほう。
エンドクレジットでは、現実に『グランツーリスモ』のゲームを作るために3Dスキャンをしているシーンや、現実のヤン(主人公)が、本作のレーシングドライバー(ある種のスタントダブル?)を務めた、とかも紹介してくれるのが嬉しい。
ただ、わたしが知りたかったのは、本作のプロジェクトとしての側面。本作は『フォード対フェラーリ』の、クリスチャン・ベールの側だけに焦点を当てたような作品。
あと、マシンの性能的に、ルマン用の車は、カーブに強いと言っていたので、主人公がアウトラインから抜けるのは分かるのだが、ラストの直線で勝てる理由は納得いかなかったなぁ。事実がそうだったならば、ストレートでもアヴェンタドールに勝てる条件(そもそもアヴェンタドールより速い?)を提示して欲しかった。