思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

TUBE 死の脱出

☆☆☆

あからさまに『CUBE』の二匹目のドジョウなのだが、原題は全然違うし、でも中身は『CUBE』みたいに閉鎖空間かつ、ちゃんとチューブというかダクトのような匍匐前進でしか進めない狭い通路なので、ある意味では間違ってはいない邦題ではある。ダサい副題も、これがないと夏の歌でお馴染みのバンドグループと区別できないから、必要だろう(^^;)
娘を転落事故で失ったショックから、道路で自殺しようとして転がっていた主人公の女を拾った車は、殺人鬼のものだった。
それに気づいた主人公は、逃げ出そうとするが、揉み合っているうちに気絶。気づいたら閉鎖空間に閉じ込められていた、という、この手のデスゲームものでは飽きるほど観た展開。百分ない映画だが、ここから始めても良かったんじゃないの? さらに十分は短くできることの他に、重要な意味もある。
この殺人鬼、チューブ(めんどくさいので、細い迷路状の通路をこう呼ぶ)を彷徨っている間に、同様のプレイヤーのように遭遇して、おまけにトラップで死んじゃうのだ。おまえがゲームマスターちゃうんかい!? それならば思わせぶりに主人公をさらう必要も、殺人鬼である必要もない。……もしかして、これがツイストとして観客を驚かせる(楽しませる)と思っていたのだろうか??
『CUBE』では数人が同時に目覚めることで、失敗するとどうなるかが分かる仕組みになっていたが、本作では主人公一人なので、デストラップばかりの本作においては、そのサスペンスが使えない。いくら凶悪なトラップでも、毎回主人公が生き延びては、ご都合主義、主人公補正で、絶対に死なないのね、と見抜かれてしまう。
そこで本作では、途中に過去のプレイヤーの腐乱死体や、先述の殺人鬼をトラップの餌食にすることで、それを演出しているのは上手いところ。ただし、リアルに考えると、あの閉鎖環境では、迷路全体に隈無く耐え難い死体臭が充満しているはずなのだが(´Д`)
主人公の怪我を直してくれるドクロロボとか、途中から主人公を執拗に追ってくるゾンビ的なヤツとか、とにかく説明がない、というより観客が、納得のゆく論理的な説明ができないんじゃないの? という構成だ。臓器を思わせる空間や、『アビス』の深海エイリアンのような「膜の向こうの何か」、主人公のゲームスーツやチューブのインテリアなど、ビジュアルは悪くないんだけどなぁ……。
後から書くオチも含めて、本作は、監督の当初の構成ではインパクトが弱くて、後からプロデューサーがいくつもどんでん返しを追加した、とかじゃないかなぁ……。

以下ネタバレ

なんと言っても本作最大のツイストは、外への出口かと思われたチューブが、空と雲を映したモニターで、主人公が脱出できなかった、つまりはバッドエンド、ということだろう。その直前につま先をギロチントラップで切断し、さらに前には、娘の霊らしき幻覚からのあの世への誘いを断っているにも関わらず、たがら物語の常道を外している。
ただし、ラストシーンは、絶望した主人公が、何かに抱え上げられるようにして、チューブの上へと上って行くので、死んであの世で娘と再会したようにも、チューブを支配する超越的な存在によって、健闘を讃えて(あるいはゲームをクリアしたので)、不思議な世界で、生き返らせた娘と幸せに暮らしまた、とも解釈できる。多分前者なのかなぁとも思うけど。