思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ザ・レジェンド


☆☆

原題は『OUTPOST』で、追放者みたいな意味らしい。
冒頭は、ニコラス・ケイジヘイデン・クリステンセンが、十字軍の騎士として戦っている。なので当然、中世を舞台にした騎士道ものだと思ったら……。なんと、5分くらいしたら、なんと舞台が中国に。中国の映画だったのだ(@_@)
じゃあ、冒頭のヨーロッパはなにだったんだと言えば、そこから数十分経って、ようやく分かる。『グレート・ウォール』みたいに、賑やかし(または客寄せパンダ)でハリウッド俳優を出すパターン。
皇帝の世継ぎ争いで、正統後継者が追われるパターン。王朝名は一切語られないが、十字軍との対応で考えると、明あたりか? まあ内容的にも、いつでもいいけど。
なんと言っても、中国人が英語を喋っている点で違和感ありまくり。けどまあ、それはいいか。中国市場とアメリカ市場をメインに見据えているだろうから。皇帝を「KING」と言ってるのも気になった。ただし、こちらは欧米化的な感覚では、宗教的要素のあるエンペラーよりは、王のほうが適切なのだ。
追われる皇子をしぶしぶながら助けるのが、ヨーロッパから流れてきたヘイデン。このへんは『グレート・ウォール』だが、そこからの展開は『ドラゴン・キングダム』のジャッキーそっくり。酒浸りならぬ阿片中毒だとか、途中で死にかけるところとか。
その後、ジェット・リー……ではなく、ニコラスが合流する。役回りはリーと同じである。
都落ちしたやつが西方に行って、再び都に戻れるかどうか、という話は中国人が好きらしく、『忠国七烈士』(原題、邦題は忘れた)や、『ドラゴン・イン』のリメイク元(これまた邦題忘れた(^^;))といい、定番と言っていい。まあ、考えたら、北京や南京から逃げるなら、西しかないのかも知らんけど。製作者の都合・政治的に、台湾や日本には行けないし。逆に、日本映画に中国人が出て来るのはいっぱいあるけど。
映画のセオリー通りなら、異人に、人としての道を教えられるのが筋で、『ドラゴン・キングダム』もそうだったのに、本作のヘイデンは、自分も阿片中毒だし、その師匠にあたるニコラスも、自己犠牲(ネタバレだけどいいでしょ?(^^;))こそやるものの、半分は舌を切られた妻の復讐みたいなところがある。百歩譲って、これが信長に仕えた黒人、みたいに史実を元にした内容なら許せるが、そうでもなさそう。『グレート・ウォール』みたいに、『東方見聞録』のように、西洋人が東方支那で遭遇した戦い、というのでもないし。要するに、最初に書いた、中国映画に、客(と資本)寄せのために、ハリウッドスターを無理矢理入れたために、ストーリーもテーマも雲散霧消してしまった、というところか。
唯一と言っていい注目ポイント。時間の経過を、ロウソクのロウが溶け切って消えるコマ落とし(早送り)で見せるカット。ちょっと不思議な感じだった。
皇子はなんかこまっしゃくれた感じだひ、その姉も可愛くも美人てないので、ビジュアル的な楽しみもあんまりなかったし。

以下ネタバレ

本作も「死んでなかったんかーい?!」案件。ニコラスに続いて、ヘイデンも、皇子を守って死んだ、というならまだ(テーマはなくとも、なんとはなしに)映画の構成として美しい終わりになるのに、まるで死んだように、真俯瞰からのクレーン・アップ・ショットで映しておきながら、ラストシーンでは歩けるまでに治っていて、『シェーン』よろしく去ってゆくのだ(´Д`)
十字軍の殺戮に絶望したから彷徨してたんでしょ? それに本作の冒険を通じて、何も掴んだようには描かれてなかったけどなあ。百歩譲って、師匠が愛妻家だとか、特に直接的に自分や皇子を守ったわけでもない。
要するに、本作のプロットは、皇帝から世継ぎの印である玉璽と共に正統後継者を告げられた弟が、嫉妬した兄の追ってから逃げ、最後は旅の途中でたまたま会った外人と兄が一騎討ちして(それをする理由がわからん。香港映画では、将軍が強いのは定番なんだけど)負けたので、堂々と都へ戻った、というだけの話。
奇しくも、作中でニコラスが言うように、この弟皇子が「権力を握ったやつは、昔の恩を忘れて手のひらを返すもの」とならない保証も、特にないんだよなあ。やったことと言えば、ヘイデンに弓を習ったくらい。
また、ヘイデンが途中で、山賊に攫われそうになる田舎娘を助けて、同行するのだが、この彼女がヘイデンといい仲になるわけでもなく(最初からいた弟の姉のほうと相愛になるので)、逆に弟皇子を好きになるでもなく、完全に空気なのだ。それくらいなら、助けてすぐ放逐すれば良かったのに。単に偉い人が売り出し中の女優で、出番を増やしたかっただけでは??