思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

潜水艦クルスクの生存者たち


☆☆☆★

ケーブルテレビで観たが、最初は周囲に黒い太枠があるので、一体何かと思った。8ミリカメラとかで撮った、ファウンド・フッテージものかと思ったくらい。
潜水艦乗りが、出航するまでの家族や、仲間との交流を描く。いざ任務(と言っても後に演出だと分かるのだが)で潜水したところ、20分くらい経って、ようやく画面が横に広がり、シネマスコープサイズ(厳密にはどう区別されるのか知らんけど)であることがわかる。しかしこれ、昔ながらの映画館で、カーテンが広がる方式なら効果的だけど、現在のデジタルだと、このテレビ放送パンダのように、単にスクリーンの真ん中しか使っていないだけにしか見えないのが問題。
ニュースを追っている人なら、潜水艦クルスクの沈没事故には聞き覚えがあるだろう。特に作中では説明がないのだが、いわゆる戦略型原潜らしく、出港シーンで分かるが、めちゃデカい。巡洋艦サイズ?
魚雷発射室の魚雷支持アームとかが、『沈黙の艦隊』と同じだ……などど、妙なところに感心してしまった。
艦隊演習の始まる前に魚雷が爆発したので、爆発音も旗艦に探知され、すぐに深海救助艇が派遣される。ところが、さすがはソ連というべきか、あまりにもヘッポコ。バッテリーは100メートル潜っただけで7割も減るし、吸着パッドの劣化で、原潜のハッチにドッキングもできない。
近くにいたイギリスの海軍司令官が、救助協力を申し出るのだが。ソ連のメンツとか、軍事機密(こちらは分からなくはない。何せ、戦略原潜なんて、最高クラスの軍事機密だ)のせいで、貴重な半日を無駄にする。
なお、事故の魚雷室爆発シーンのエフェクトは良かった。
本作は、見終わったら、誰もが一緒に観た人にひとこと言いたくなる作品である。

以下ネタバレ

なにしろ、『潜水艦クルスクの生存者たち』という邦題なのに、なんと生存者なのだ! 邦題サギやん!? 百歩譲れば、ちょくちょく出てくる、潜水艦乗りの家族のことだと言えなくもないが、無理はある。百人が百人ながら、救出された人の証言を元に描かれた映画だと思うやん(´Д`)
だからこそ、乗組員全員死亡というニュースをちゃんと覚えていた人以外は、ラストにショックを受けるだろう。ちなみに、原題はロシア語で『クルスク』のみ。私も邦題は、YouTube『シネマサロン』の酒匂氏が提案した『潜水艦クルスクを救出せよ』がベターだと思うなぁ。
また、イギリスの救出隊が突入した時に全員の死んでいるところで、画面サイズが再びテレビサイズに戻る。そこで、ようやくシネスコサイズの部分が想像であることが分かるというしかけだ。
その割には、地上の乗組員の家族がニュースで潜水艦事故を知って、軍に詰め寄る断章もシネスコサイズだとか、不徹底なのが問題ではあるが。まあ、ミステリーじゃないのでいいか。私は見たことないけど、カットごとに画面サイズが変わる(アイマックスカメラで撮影したショットと、そうでないショットをそのまま繋げているかららしい)映画もハリウッドではまあまああるらしいので、そうしても、特異でもないのかもしれないけど。