思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

レフト・ビハインド

☆☆★

『巡り会えたら』みたいなテイストで邦題をつけるなら、『取り残されて』という感じの映画。
どこまでもスケールを大きくできるネタで、アメリカのブロックバスター小説なら、上中下の3巻編製になってもおかしくないくらい。
ネタバレなしで書くと、旅客機のCGやミニチュア(一機の飛行機ね)がショボいのが残念。同じニコラス刑事なら、『ノウイング』のほうが数倍、金がかかってる。もしかして、ネタ的に、アメリカ版の幸福の科学映画みたいな経緯の作品だったりする? 逆に、自主制作映画でもできそうなネタでもある。地上パートとして、ニコラスの娘が、これまた多くの人々が消えて、パニックになった街を彷徨う。それぞれを、別の低予算映画の『1』『2』として別々に作ったほうが良かったんじゃないのかなぁ(^^;)
ネタバレなしの範囲内で書くなら、乗り物パニック、『エアポート』シリーズのような旅客機パニックものである事は間違いない。
地上パートが多すぎることと、メガ盛り要素が乗り物パニック要素を食っているので、同ジャンルが好きな人でも、好みは真っ二つに別れそう。中でも否定派寄りに(^^;)

以下ネタバレ

本作は、よく知らないが、キリスト教原理主義者が、教義を広めるために作ったかのような映画。敬虔なクリスチャン、というよりも、純粋ない魂の持ち主だけが天国へ全世界中で一度に昇天した。どうも携挙とかいうらしい。キリスト教信者ではない大部分の人からすると、着ていた服を残して、一瞬にして人間が消える、超常現象が起こった。ニコラス刑事はジェット旅客機のパイロット役(刑事と変換したままだとややこしいか(^^;))なので、副操縦士
スチュワーデス、多くの乗客が消えた機内は、必然的に乗り物パニック映画そのものの展開となる。おまけに、何故か(映画の終盤になってようやく応答があるが、それまで何をやっていて返事できなかったのか、説明がない)地上との無線も、携帯電話も終盤まで通じない。このへんも理由がないとか、脚本がテキトーなところだ。
SFファンからすると、新生児が1人残らず消えているのはいいとして、生まれる前の胎児はどうなるのか描写がない(特に妊娠中絶には論議を呼ぶアメリカだけに)とか、良くも悪くもツッコミたいネタなのに、スルーするあたりが、C級の所以か。
ニコラス刑事があの顔でモテるのは、まあ映画内ではハンサム役ってことで許せるとしても(^^;)
旅客機パニックものとしては、完全に平凡そのもので、翼の損傷を、乗客がカメラで撮って、機長に見せる、という(細かい)描写が面白かったくらい。
聖書ものとしては、人が消えた理由が「聖書に書いてあるから」以外の説明がないので、ほぼ旅客機パニックのきっかけくらいにしか機能していないので、二度を追って、どちらも中途半端になった典型。何より、旅客機が被害者ゼロで不時着できても、消えた人は戻らず、何も解決していないのだ。
とは言え、序盤にさんざん伏線を貼っていたように、災害や事故に遭った時、残された遺族はどう感じたらいいのか、その答えは観た人が考えろ、ということなのか(^^;)
特に旅客機内は、閉鎖環境でもあり、キリスト教的な設定とか、『ミスト』のような昇天/生贄論が聞けるのかと思ったら、そこはオカルト的に処理されていて、拍子抜け。そここそが描きたかったんじゃないの??