思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

運命のボタン

☆☆☆★

なんだか恋愛映画みたいなタイトルだが、本作はSFホラー。スティーヴン・キングみたいだな、と思ったら案の定というか、その元祖リチャード・マシスン原作だった。
原題は「THE BOX」というボタンのシルエットを的確に表したもの。
割と最近の映画なのに、舞台が70年代なのは、原作の発表当時の風俗を取り込むためか。主人公は、宇宙飛行士を希望するNASAの職員。でも、仕事中に妻の義足(つま先だけの、シリコーン製)を公然と作ってたりするので(同僚も非難しない。研究の一環ってことで許されてるのか?)、宇宙飛行士の選抜試験に落ちた、言われても同情できない。妻のキャメロン・ディアスのほうも、金遣いが荒い(とはいえ、実際に作中で描かれるのは夫のスポーツカー購入くらい。住んでるところや家電も高そうだが、時代設定を昔にしているせいで、アメリカの昔の生活レベルがわからない)てな感じで、どちらにも感情移入しづらい。生活レベルを落としたくないから、100万ドルがもらえるボタンを押すと知らない誰かが死ぬ、と悩むのも同情できない。
ボタンを持ってくるスチュワードは、左頬が火傷で爛れて、歯が見えている、ショッキングなビジュアルで、特殊メイクではないぶん、しっかり窪んでいるのは良いのだが、CGがショボイので、いまいち不気味さも半減。全編、画面全体をボカすことでごまかしているが。
ボタンを押せば、知らない誰かが死ぬ、というのも、次は自分、つまり連鎖する「不幸の手紙」方式であることは容易に想像できる。それでも押してしまう人間の欲望というか、浅はかさ、というのは分かるのだが……。
製作陣もそのへんは分かっているのか、それだけで一本作らず、後半は、謎のボタンを使ったのは何者なのか? という方向にシフトする。どうやら、スチュワードは神だか宇宙人だかに操られ、自分の手下を異世界で洗脳することで増やしている。
作中で「十分に進歩した科学は魔術と見分けがつかない」というアーサー・C・クラークの言葉が出てくる。ここは「魔法」と訳してくれないと。訳者が原作を知らないことがバレたところ(´Д`) 作中の異世界の描写も、ちょっと『2001年』を意識しているし、後半の映像はキューブリックっぽい、左右対称画面になっている(^^;)
クラークを意識すると、本作の「雇い主」も、モノリスオーバーロードにしか思えなくなってくる。
余談だが、キャメロン・ディアスは全く可愛いとも美人とも思えない。むしろ不細工かつ怖い。シャーリーズ・セロンがメイク頑張った『モンスター』をノーメイクでできるんじゃない? あとはオバケ役とか。本作にも、メチャクチャ怖い三白眼のカットがあったよ(@_@)