思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

バクマン

☆☆☆★

実写映画版。原作と比べると、漫画家業界のリアリティは欠けているものの、映画的な人間ドラマを盛り上げるため、と解釈できる。
それは、『アオイホノオ』的な、シンプルな「マンガにかける青春」だ。
本作の独自性と、ある種の舞台設定のリアリティを担保しているのが、実在のジャンプ編集部でロケ撮影したとしか思えない編集部だ。情報ゼロなので、事実はわからないが。
アシスタントがいないとかも、ジャンプのモットーである友情・努力・勝利(ちゃんと作中に出てくる)を体現する展開のために敢えての設定変更だと納得できる。アシスタントを説明する時間がないのも分かるし。主人公ふたりが、あだ名を付けるシーンもカットしつつ、メールでさりげなく映すなど、省略はうまい。
ただし、中盤に最大の問題がある。新妻エイジとの対決をデカイペンを振り回して、CGでインクが飛ぶ、というヘタなCG専門学校のCMみたいな映像になるのだ。百歩譲って、それがメリハリある、迫力ある映像なら良いのだが、単調かつ、長いのだ。ここはマンガを描くアップの切り返しでしょうよ!?(´Д`)
本作を成立させているのが、劇中に出てくるマンガそのもの。どう見ても原作者である小畑健が描いているとしか思えない。原作にあったのをとっておいて再利用したのか、もしかしたら全て新たに、映画用の素材として描き直したのかもしれない。その白眉が、映画のヒロイン役の女優をモデルにしたキャラが出てくるイラストとマンガの展開だ。もちろん土方茂ファンなら、小畑キャラであることは分かるが、それ以上に、女優をモデルにしていることは誰でも分かる。すさまじい画力と(本業のマンガを描きながら、映画用素材も描く)スピードである。実際に髪のラインを一発で入れるカットもあり、これなんか小畑先生本人の手じゃないの??
映画そのものには、オイオイ、というツッコミ所があるものの、原作ファンも満足できるのは、小畑健の映画用の新作マンガが読めたから、という要素は実は欠かせない点。