思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『悪の法則』☆☆☆★

岡田斗司夫とか宇多丸師匠が絶賛していたので、期待してみたが、私的にはちょっと乗りきれなかった。
両者の感想ではネタバレなし、あるいはそこは見聞していなかったので、最初は映画ジャンルがまず掴めなかった。
中盤になって、見た中で最も近いのが『ボーダーライン』とか『アシュラ』とか。『パルプ・フィクション』などのタランティーノっぽくもある。頭のいいタランティーノ映画??
ハンサムで女にもモテ、セックスもうまい、弁護士なので金持ちと、リア充爆発の主人公が、プロポーズの結婚指輪で奮発したことをきっかけに、出来心で麻薬売買に手を出したら、とんでもないしっぺ返しを食らう、という話である。原題『The Counselor』は、主人公の職業である弁護士のこと。
彼にとってのポイント・オブ・ノーリターンは、多分日本における国選弁護士みたいな制度で担当することになった女囚の息子の交通違反を助けたら、彼が麻薬の売人だった、という不運。まあ、元々その前にブラピ演じる知人の麻薬売買に加わっていたからなんだけど。
そこからは「組織(カルテル)」にじわじわと彼と周囲の関係者が追われ、狩られ、始末されていく、という展開。要するに、裏社会に手を出したら、人生辞める結末しかない、という意味での邦題なのだろう。が、原題のほうが「ある一般的な社会人が、ちょっとした出来心から人生転落することもある」という人間社会の真理を表していて良かったのではないだろうか。
その追い詰め方が、本作の見所。これをフィクション的な悪趣味と取る人も当然いるだろうが、『ボーダーライン』を観たりとか中米麻薬戦争の本を読んだところからすると、全くの事実に基づいた演出。
劇伴は、メキシコの麻薬組織のシーンでは、数回あるが、毎回トボけた外し演出がなされている。最初は「何これ?(´д`)」となるのだが、次第に、この日常的・能天気にやっている麻薬密売活動が逆に怖いように見える。
逆に、ブラピが殺される前に最後にホテルから出るシークエンスでは、唯一、メロディアスで格好良いサウンドが流れる。これだけなら、サントラ(1曲だけ)買ってもいいかな、と思えたほど。

以下、ネタバレ

ペネロペ・クルスが、ただ弁護士の婚約者というだけで何の関与もないのに、拉致され、後に逃亡中の弁護士の元に1枚のDVDが送られてくる。そこには「HOLA!(やぁ!)」とだけ書かれている。そのディスクを見た直後に、彼が泣き崩れるカットになるのだが、それがよく分からなかった。某ブログには彼女が首を切られた後に陵辱される、とあるのだが、ケーブルテレビ放送時にカットされたのだろうか? もちろん、前半にそんな女がいたことをブラピに語られているから、なんとなく想像できなくはなかったのだが・・・。カットされていないとしたら、いくら彼女の死体が捨てられるカットには気付いていたとはいえ、ちょっと不親切??
ブラピがこれまた前半に聞いていたトラップを食らって首を切られるシークエンスも、なかなかショッキングではあるが、ワイヤーに指をひっかけているんだから、まず指が飛ぶんじゃないの? 先に指が外れたから、てっきり指が切断されたからだと思ったのに、わざわざ手を真ん中に映したカットを入れておいて五指そのままだもん(´д`)
終盤になったら誰でもわかるであろう、黒幕がキャメロン・ディアスでしたオチ。
ブラピをハニトラした女性も彼女の差し金だったのだが、彼女がブラピの前ではいい女っぽかったのに、仕事を終えて彼女の前ではちょっとイケイケ風ではあるがプチブサイクだったのに対して、キャメロン(と書くとどうしてもジェームズ・キャメロンしか連想できない)はブサイクを徹底メイクで美魔女風にごまかしているあたりが、本作を象徴していると考えられなくもないかも。
というか、そもそも本作において黒幕なんて、登場する必要はなかったと思う。『ボーダーライン』みたいに、あくまでも謎で恐ろしい組織、という程度で十分ではなかっただろうか。ただ、ラストでファンドマネージャーっぽい男が急に登場するので、今度はキャメロンが狩られる側になる、という可能性もゼロではなく、無限に連鎖していく可能性も残しているようにも想像できなくはなかったり。

余談

キャメロンの異常性というか、ちょっと変わった性癖を表すものとして、文字通りのカーセックスシーンがある。なんとフロントガラスにアソコを擦り付けてマスターベーションするのだ。これ、『クラッシュ』の監督が見たら、身悶えして悔しがるんじゃないかなぁ(^_^;)

2013年 アメリ