思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

スペース・バンパイア


☆☆☆★

よくエッチ系映画の代名詞的に出てくるので、気にはなっていたもの。どうせ主演女優の裸だけがウリのC級映画だろうとたかを括っていたら、オープニングから入る襟を正させられた。
音楽がいきなり格好いいと思ったらヘンリー・マンシーニだし、ビジュアル面では、ダイクストラを始めとするILMの面々の名前が。SFファンなら、これは期待せずにはおれない。
ちなみに、原題は『LIFE Force』で、私的にはつい『沙羅曼蛇』の海外版を連想するが、本編では『生命力』とか『精力』という訳語になっている。オープニングには「原作 スペース・バンパイア」となっているので、映画の邦題は別に超訳ではないこともわかる。作中では「vampire」を、「バンパイア」のほか、「吸精鬼」と訳していたりするのは、『スター・ウォーズ』で「force」を「理力」と訳していたのと同時代性を感じるところ。
映画は、いきなりスペース・シャトルハレー彗星にアプローチする場面から始まる。そこで120キロもある謎の物体を発見し、調査する。形状は、矢のようである。
中には干からびたコウモリか翼竜のようなものと、さらに内部には裸の男女の透明カプセルが。
考えたら、裸である必然性もないが、服を着ているのもおかしいし、最初は人間ではないことも示す必要があるので、やはり裸である必要はあったのかも。
『ライフ』的なドタバタがあって(それは映画の後半に明かされる)、地球にやってきた彼女らは、隔離されたとはいえ、周囲の医師や学者の生気を吸い取って、脱出する。2時間するとミイラになったヤツも生き返り、それ以前に獲物が寄ってこなかった場合は、すぐに人間の精気を奪わないと、灰になってしまう。これ、本文を書いている今になって気づいたけど、エイリアンたちの正体が吸血鬼であることを示してたんだね(^^;)
というのも、(話を一旦終盤に飛ばして)最後は完全にゾンビ映画になるから、吸血鬼ってことを忘れちゃうんだよねぇ。もちろん、ゾンビが吸血鬼の設定を取り入れたんだけど、本作はそこを再び逆輸入した、といえなくもないかも。本作のエイリアンは、過去にやってきた彼女たちが、歴史上、吸血鬼として記憶されていた、というもの。『幼年期の終わり』のパクリも入れているあたりがB級らしい。
内容を簡単に言えば、後に作られた『スピーシーズ』の元ネタ、というのが手っ取り早い。本作にはそれ以外の要素が大量にあるので、余計に贅沢というか、ゴチャ盛り。
なお、この2時間ルール、中盤あたりに出てくるのだが、それ以外ではほとんど無視、というよりそれに矛盾する描写が多い。逆に、この2時間ルールを外せばすんなりまとまる。全体的にチグハグで、緩い脚本、または試写後にプロデューサーが後から後からいろいろ(整合性とか考えず)付け足したんじゃないか? という気がする。
本作をゾンビ映画とするなら、走るゾンビは松崎健男氏が『28日後』が最初、と言ってたけど、本作のほうがだいぶ先んじてない??
途中、精神病院の院長役で『スタトレ ネクストジェネレーション』のビカード艦長が出てくるが、彼が麻酔で眠らされて車椅子で押されるところが、『Xメン』のボス役を予見していたみたいだったり(^^;)
そもそも、女吸血鬼エイリアンがずっと裸、というのがウリだったのに、中盤、唐突に「他の人間に乗り移れる」という設定になるあたりも、後から突っ込んだ部分っぽさを感じさせる。クライマックスには結局、また裸で横たわってるんだもん。
本作のチグハグさを表すのが、主人公は誰か? ということ。最初のシャトル型調査船の乗組員は全滅するし(唯一の生存者は中盤に登場)、序盤の科学者チームも、その一人があっさりやられる。そこへやってきた空軍特殊部隊の大佐が主人公的に動き回り、クライマックスでは、鉄の剣を唯一の生存者に渡す役目を担う。
このシーン、声をかけたらバレるでしょ? 魅入らせて犯しているバンパイアの背後から忍び寄って、剣を突き立てるのが常道でしょ? 男のほうが受け取って、抱き合ったまま、自分にまで剣を突き刺す、という心中を描きたかったのか。
それで消滅して終わりではなく、二人とも、他の人間の生命エネルギーと同様に宇宙船に吸い取られるのが1カット入るが、これも追加?? だって、ほかのバンパイアは、剣を刺されたら灰になってたやん!?
ラストカットは、宇宙船が変型して、まるで『2001年 宇宙の旅』のオデッセウス号のようなシルエットになって飛び立つ、というオマージュなんだかパロディなんだかよくわからない感じで終わる。
内容を書いてると、完全にC級なんだけど、それを感じさせない、B級映画に見えるのは、ヘンリー・マンシーニの音楽力だよなぁ。

1985年 イギリス・アメリ