思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『わざわざゾンビを殺す人間なんていない』小林泰三
☆☆☆☆
二見ホラー・ミステリ文庫

もはやSFミステリの中でも、ゾンビ物、という1ジャンルを形成していると言っても過言ではのか。『生ける屍の死』を筆頭に、『屍人荘の殺人』などが記憶に新しい。
本作では、それを上回る凝った設定。解説で我孫子武丸氏が嘆いているが、小林泰三がイマイチ爆発しなかったのは、設定が凝りすぎているからでは? 『ワールドウォーZ』か? というくらい、全人類が死んだらゾンビ化する、という設定なのだ。
おまけに○○ゾンビという独自設定を加えて、それが本作ならではのミステリ的およびホラーとしての味付けになっている。この辺はSF作家、ホラー作家としても活躍していた作者の面目躍如というところ。
純粋に本格ミステリとしてみると、ちょっと地味なのだが、先にあげた要素によって、ミステリSFとして十二分に面白く読めた。ミステリとしては65点、SF/ホラーとしてプラス15点、というところか。
遠田志帆氏のイラストも相変わらず素晴らしい。