思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

バイロケーション

法条遥
☆☆☆☆
角川ホラー文庫

いわゆるドッペルゲンガーとは違うらしい、本作のバイロケーションの設定は、独自のものかと思ったが、巻末にあるホラー大賞選考評によると、用語じたいは既存のものらしい。
ドッペルゲンガーのように単に目の前に現れるだけではなく、他人と会話もできるし、買い物をすることもできるが、一定時間経つと消えてしまう。ミステリSFてまあるデイヴィット・ブリンの『ゴーレム』に近い設定だが、毎回、発生した時点の記憶を持っている、という意味では、『パーマン』のコピーロボットにより近いかも。
そのバイロケーションにより、画家志望の新婚さんである主人公がトラブルに巻き込まれ、ある金持ちが作った「被害者の会」に招かれ、バイロケーションによる悲劇と向き合う。
とりあえず、作中でもバイロケーションの出現のタイミングや場所、消失のタイミングも不定期なので、ミステリSFとしての謎解きの面白さがないのが残念なところ。
まあ、本作はあくまでもホラーなのでそこはないものねだりかもしれないが……。
ラストには、やっぱりそう来るよな、と予想して、手がかりを探していたオチもあり、そのへんが本作を評価する人が多い理由なのか。
少なくとも、ホラーとしては充分なオチと言える。