思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ティンカー・ベル殺し

小林泰三
☆☆☆★
東京創元社

童話殺人シリーズ、今回のテーマはピーター・パン。
さすがはスプラッター・ホラーの小林氏らしく、無慈悲というか、人間ではないので倫理もなく、バカだからこそ無慈悲に人や妖精を殺しまくるピーター・パンというブラックさが小林氏らしいアレンジ……と感心していたら、なんとこれは原典に忠実なテイストなんだとか。巻末に、解説ではなく、作者自身による原作者と原作シリーズの解説で読んでびっくりした。
シリーズの共通設定として、主人公の井森は、夢の世界ではイモリならぬトカゲのビルとして、そして周囲の人々も同じくアヴァターとして記憶を共有している。夢の世界での殺し(妖精殺しなので、殺人とは書けないので(^^;))の犯人と、ジャイアン以上に暴虐なピーター・パンの脅威から逃れるため、井森たちは推理を進める。
夢の世界と現実世界では、名前が似ているので、それを手がかりにすれば、読者はイメージしやすいのだが、井森たちは、名前が似ていることに一切触れないのはおかしいよなぁ……。もちろん、それがレッド・ヘリングだからなんだけど、ミスリードとしても1度は触れとかないといけないのでは?
本書には現実と夢の2つの世界があることもあって、登場人物が結構多いのに、登場人物紹介がない。先の名前の類似のおかげでなんとかキャラ迷子になることはないが、実は登場人物紹介があると犯人がバレてしまうタイプのミステリだった(^^;)