思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『8 1/2』
☆☆

町山さんが『エヴァ』を解説する際に何度となく出てきた本作。奇妙なタイトルと、巨匠と呼ばれるフェリーニの勉強、という観点で観てみた。なお、タイトルの方はウィキによると共同監督作品を1/2とし、フェリーニの9つ目の映画、というだけの意味らしい。
この映画、メチャクチャ古い映画かと思いきや、63年とは、調べてみれば日本映画ですらカラーの時代(初のカラー特撮『モスラ』が61年だった)なので、白黒は美意識ゆえのものか。
ちょっとだけ予備知識があったので、次々に現れる、現実なのか非現実なのか分からない編集と展開に翻弄されっぱなし。押井監督の『天使のたまご』みたい。
こういう映画は、その幻想が観客に合うかどうか、好きか嫌いか、が全てではないだろうか。白黒としての照明や階調、構図の美しさはともかく、起きていることや、映画監督の苦悩には全く共感できなかった。根底には監督という地位、金をある程度自由に使える環境、作中でもハーレムを妄想している通り(これだけは幻想であると作品だけでも分かるようになっている)美女に囲まれている、などなど、要するにリア充のわがままとしか受け取れないのだ。
まあ、哲学的に言えば、金・地位・名誉・異性などが揃っていても幸せとは無関係、というテーマなのかもしれないが・・・。
あと、字幕で翻訳されていないセリフが多数あったのも気になった。逆に、本筋やテーマとは無関係だから聞き流して良い、ということなのかなぁ・・・。