思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ハーモニー』
☆☆

原作は読んでいるが、内容はあんまり覚えていない。
近いのか遠いのかよく分からない未来で、自分とは?生命とは?というテーマを描いた映画。
まずは、いかにも「未来でしょ?」と言わんばかりの都市デザイン。それ自体は好き嫌いが分かれるとしてもアリ。

ただし、どうも東京らしいのに、空港とかを除くと、ほぼ無人?といわんばかりの人口密度が薄いのが問題。レストランの背景…にしても2、3人程度しかいないのだ。
これによって、ラストに語られる「一般庶民」的な生活感、視聴者の共感性が全くないのだ。原作の方は、ある種の私小説的な、作者と読者の対決として成立している構図だと思うが、映画となると、完全にセカイ系として、受け付けない人も多いのでは?(要するに失敗)

映画の構造としては、押井守神山健治っぽく作っているのが明らか。もちろん3DCGというのもあるが、主人公とヒロインを追う構造、というも非常にそれっぽい部分。
ただし、どちらもモブキャラはしっかり存在していたので、あくまでも亜流というか表面だけで、演出の根幹部分は踏まえられていないのでは?

また、キャラまで含めて3DCGで描かれていることが、生命(人間、恋愛、セックス)というテーマを描くのに適当だったのか、という問題が非常に引っかかる。はっきり言って逆効果では?
またそれと同じ問題かもしれないが、ヒロインであるミァハの声が、キャラと合っていないのが非常に引っかかった。要するに妖艶なビジュアルと、幼い声にギャップがあるのだ。
…しかし、ラストの対決シーンを見ると、単純に下手なだけなのかもしれない。よく言えば、絵が上がっていない段階でアフレコしたせいかもしれないが…。

エンドロールでも世界・自然の素晴らしさを撮ったようなシーンの連続。要するに、世界の広さを映画として入れ込んだのが失敗なのだ。
手書きアニメで、あくまでも主人公とヒロインの一対一の対決として、密室劇的に(他人や周辺は出るが、あくまでも主人公たちの背景として)描くべきだったのだ。

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アニプレックス 2016-03-09