思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ホラー映画の魅力』小中千昭
☆☆★

ラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』で推薦していたので読んでみたが。脚本家の小中氏の半生に関心がある人以外は、同ラジオの三宅隆太氏の解説のほうが質、面白さともに数段良かった。
本書では、過去の低予算ビデオ映画で試みられた手法、すなわち疑似ドキュメント(フェイクドキュメント)についての具体例についてはラジオよりはよく分かる。後は七十年代からの様々なホラー映画の紹介など。

ホラー映画の魅力 ファンダメンタル・ホラー宣言 (岩波アクティブ新書)ホラー映画の魅力 ファンダメンタル・ホラー宣言 (岩波アクティブ新書)
小中 千昭

岩波書店 2003-09-06



ヤマトタケルの正体』
☆☆☆

平安時代以降、「鬼」は「オニ」と読むようになったが、それ以前は「モノ」と呼ばれていた。」

斉明天皇は、もともと親蘇我派の皇族であった。(略)無謀な百済救援に走ったのである。」
とあるが、蘇我が渡来人であれば、故郷である朝鮮半島に介入して何の不思議もない。百済=日本領説を取るならなおさら腑に落ちるだろう。

「『日本書紀』は七世紀の歴史を改竄した。だがそうなると、今度は、五世紀、さらには三世紀の歴史まで、手をくわえる必要がでてきたのだろう。蘇我氏の祖の武内宿禰が初代王と血縁関係があったことを、抹殺する必要に迫られ、ヤマトタケルという偶像を練り上げていったに違いない。だからこそ、ヤマトタケル武内宿禰であり、あるときは雄略天皇であり、聖徳太子であり、またあるときは天武天皇だったということになる。」

ちなみに武内宿禰は、「たけのうち宿禰」ではなく「たけ内宿禰」であり、内宿禰は職名なのだそうだ。清少納言と同じ文字構成だったのね(・・)
名前に「武」が入る天皇が、全て蘇我=出雲系の人物である、という指摘は興味深い。

ヤマトタケルは(略)武内宿禰であり、浦島太郎であり、塩土老翁であった。そして塩土老翁に導かれた神武天皇も「武の王」であり」

「『日本書紀』は、藤原のための歴史書であり、彼らは天皇家の歴史を美化するためにこの文書を編纂したのではなかった。」

創られた英雄 創られた英雄 ヤマトタケルの正体創られた英雄 創られた英雄 ヤマトタケルの正体
関 裕二

PHP研究所 2013-03-15